著者
村上 守良 六反田 篤 伊東 励 伊波 富夫 祐田 彰 小住 哲也 香月 俊祐 宮崎 秀夫 佐伯 栄一
出版者
九州歯科学会
雑誌
九州齒科學會雜誌 : Kyushu-Shika-Gakkai-zasshi (ISSN:03686833)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.673-685, 1979-01-31

1964年から1965年にかけて沖縄で大流行した風疹は, 妊娠中であった母親に感染し, 罹患した母親から種々の障害を持った子が出生した.風疹の胎児感染による人体への影響について種々の分野から多数の研究報告がなされ, 長骨の異常, 生歯の異常などが指摘されている.口腔領域の研究報告は少く, 未だ多くの疑問が残されたままとなっている.著者らは発症後12年を経過した昭和52年8月, 沖縄における先天性風疹症候詳児104名(男55名, 女49名)について, 口腔診査, 上・下歯列の印象採得, X線撮影を行ない乳歯残存状況について検討した結果, 次のごとき結論をえた.1.乳歯残存保有者率は男47.27%, 女40.82%, 男女合計44.23%である.2.乳歯残存歯率は男6.27%, 女4.80%, 男女合計5.58%である.3.一人平均乳歯残存保有歯数は男1.25本, 女0.96本男女合計1.12本である.4.1∿4歯の乳歯残存保有者が男40.00%, 女38.78%, 男女合計39.41%で, これは乳歯残存を有するもののうち約90%をしめている.5.歯種別, 顎別の乳歯残存歯率は, 正常児に比し, 第二乳臼歯の残存率が男女とも上・下顎において特に高率である.6.乳歯残存の後継歯の存在率は乳犬歯で, 男86.05%, 女94.29%, 男女合計89.74%, 第一乳臼歯では男85.71%, 女100.00%, 男女合計91.67%, 第二乳臼歯では男89.47%, 女100.00%, 男女合計92.31%である.7.先天性風疹症候詳児は正常児より, 乳歯の晩期残存が多数みられ, 永久歯の萌出が遅滞している.
著者
葭原 明弘 深井 浩一 両角 祐子 廣富 敏伸 宮崎 秀夫
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.822-827, 2001
参考文献数
21
被引用文献数
7

1999年の歯科疾患実態調査によると,5〜14歳で歯肉に所見のある考は47.4%に達している。歯肉炎は主に歯間乳頭部から初発することから,歯肉炎予防にはデンタルフロスの使用が重要と考えられる。本調査の目的は,デンタルフロスを用いた歯科保健指導による歯肉炎の改善と口腔保健行動の変容について評価するものである。対象者は新潟県M小学校の5年生39人(テスト群),Y小学校の5年生18人(コントロール群)であった。テスト群には給食後のブラッシングに加え,上下顎前歯部にデンタルフロスを使用するよう歯科衛生士が指導した。診査はベースライン時(2000年5月)および6ヵ月後に,同一1名の歯科医師が行い,上下顎前歯の歯間乳頭部を対象にPapilla Bleeding IndexおよびPlaque Indexの要訣を用いた。ベースラインにおける一人平均出血部位数,歯垢付首部拉数およびデンタルフロスの家庭での使用率に,2群間で有意な差は認められなかった。一人平均出血部拉数は,テスト群では4.67(SD=3.01)部位から3.03(SD=2.70)部位に減少したのに対し,コントロール群では4.59(SD=2.50)から5.41(SD=3.43)に増加した。6ヵ月間の変化量の差は統計学的に有意であった(p=0.003,Mann-Whitney U検定)。一人平均歯垢付着部位数は,テスト群では4.64(SD=3.02)部位から3.41 (SD=2.68)部位に減少したのに対し,コントロール群では,5.12(SD=2.93)から6.41(SD=2.62)に増加した。6ヵ月間の変化量は,統計学的に有意だった(p=0.008,Mann-Whitney U検定)。さらに,6ヵ月間でデンタルフロスを新たに家庭で使用するようになった者は,テスト群で51.5‰コントロール群で22.2%であった(p=0.023,χ^2検定)。今目の結果は,デンタルフロスの使用を取り入れた歯科保健指導により歯肉炎が抑制されたこと,さらに対象学童の行動変容が起きたことを示している。本プログラムは学校歯科保健活動に組み入れることが比較的容易であり,また今後広く普及が可能な方法と考える。
著者
佐久間 汐子 清田 義和 中林 智美 高徳 幸男 石上 和男 宮崎 秀夫
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.567-573, 2005-10-30 (Released:2018-03-23)
参考文献数
14
被引用文献数
1

新潟県三島町では, 1歳児を対象に3歳まで6カ月ごとのフッ化物歯面塗布(F塗布)とフッ化物配合歯磨剤(F歯磨剤)の配布による家庭内応用を組み合わせたう蝕予防事業を実施した.本研究は, 本事業の有効性, F塗布とF歯磨剤の受け入れやすさの比較, F歯磨剤の付加的効果について評価することを目的とした.対象児は, 当該町の1990年度〜1998年度の3歳児健康診査, 1997年度〜2001年度就学児健康診査の受診児である.う蝕有病者率は有意に低下し, 3歳児では事業開始前の42〜47%から17%に, 就学児では同様に73%から51%に低下した.また, 就学児を個人別に分類すると, 事業参加群の1.54本に対し, ほかの2群は3本以上であった.受け入れやすさについては, F塗布の定期受療児の割合83.6%に対し, F歯磨剤を1日1回使用した幼児の割合は55.2%であった.F塗布の定期受療児でF歯磨剤の「1日1回使用」群と「使用せず」群との3歳児および就学児の有病者率の比較は, 就学児で有意差が認められた.さらに, 就学児のdf歯数を目的変数とする段階式重回帰分析で, 有意な説明変数は「1〜3歳までF歯磨剤を使用せず」のみであった.以上より, F歯磨剤の付加的効果が示唆された.乳歯う蝕予防対策としては, 受け入れやすさを考慮すると, 6カ月ごとのF塗布を基本にF歯磨剤の使用を付随する形で指導することが望ましいと考えられる.
著者
村田 貴俊 藤山 友紀 ラハルジョー アントン 尾花 典隆 宮崎 秀夫
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.190-195, 2002-07-30 (Released:2017-12-15)
参考文献数
16
被引用文献数
3

近年の国民の清潔志向を反映し,各種アンケート調査でも,口臭を気にしている人が多く存在する。また,口臭の抑制,予防を目的とした洗口剤が広く市販,使用されている。しかし,本邦で市販されている洗口剤の多くは臭気物質のマスキング効果を主としており,口臭の主な原因である揮発性硫化物の検出を抑える成分は含まれていない。そのため,洗口直後でさえも,高濃度の揮発性硫化物(VSC)の検出が認められることが多い。われわれは,内外の研究報告から塩化亜鉛を取り上げ,塩化亜鉛を含む洗口剤によるVSCの検出抑制効果について検討した。口腔内気体中にVSCが検出される人のなかから,同意を得られた成人男性8人を対象とし,0.1%塩化亜鉛洗口剤および偽剤による洗口前後において,口腔内気体中のVSCを,炎光光度検出器付きガスクロマトグラフ,記録計,自動試料注入装置からなる分析システムを用いて測定し,この洗口剤の効果を二重盲検法,交差研究により検討した。その結果,この洗口剤によって,顕著なVSC濃度の減少が認められ,少なくとも90分間は口腔内からのVSCの産生を抑制した。このことは塩化亜鉛を含む洗口剤が優れた口臭抑制効果をもつことを示しており,本邦でもこのようなVSCの検出を抑制する洗口剤の流通が望まれる。
著者
安細 敏弘 粟野 秀慈 川崎 正人 嶋崎 義浩 邵 仁浩 宮崎 秀夫 竹原 直道
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.632-636, 1992-10-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
8
被引用文献数
1

The purpose of this study was to evaluate the oral health of Iranian workers in Japan and their general life conditions, 125 Iranian subjects aged 20-43 yr congregating in Yoyogi and Ueno Parks in Tokyo were examined. The mean decayed, missing, and filled teeth (DMFT=7.8) and filled teeth (FT=2.3) scores were lower than the Japanese national average. The mean decayed teeth (DT=3.4) and missing teeth (MT=2.2) scores were higher than the Japanese national average. Calculus was the predominant periodontal problem, and shallow pockets prevailed in persons aged 30-34 yr. 39.7% of the subjects had complaints about their oral health, but only 16.8% desired dental treatment in Japan. Most of the subjects could not undergo dental treatment because of the high cost. Analysis of the results showed poor dental health in this survey group and emphasizes the necessity of improving the (dental) health service programs for foreigners.
著者
鈴木 亜夕帆 渡邊 智子 渡邊 令子 中路 和子 満田 浩子 井上 小百合 山岡 近子 西牟田 守 宮崎 秀夫
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.259-269, 2015
被引用文献数
1

自立した生活をしている81歳の男女58名の3日間の食事秤量調査を行い,食生活の実態について検討した。1) 血液検査値,体位およびBMIは,それぞれ正常範囲内であった。2) 男女とも嗜好飲料類の摂取量が一番多く,次いで,穀類の摂取量であった。穀類摂取量の変動係数は,食品群の中一番低く,藻類および菓子類は,男女で摂取量の個人差の違いが異なる食品群であり,女性は男性に比べ,菓子類の摂取量が多く,そのばらつきも少なかった。3) エネルギー摂取量は,男性2,077kcal,女性1,761kcalで男女とも適正であった。エネルギー産生栄養素比率は,たんぱく質:男性15.4%,女性15.2%,脂質:男性23.9%,女性24.1%,炭水化物:男性56.6%,女性59.9%,アルコール:男性4.1%,女性0.7%であった。4) イコサトリエン酸およびアラキドン酸で男性が女性よりも有意に多く摂取していた。エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の合計摂取量は,1.1g (男性1.2g,女性1.0g) であった。5) グルタミン酸,次いでアスパラギン酸が多く摂取されていた。6) ショ糖,次いでぶどう糖および果糖が多く摂取されていた。7) 日本人の食事摂取基準2010年版から対象者の個人別必要エネルギーを算出した値と,実摂取量とを比較すると,男女ともに1%以内の相違にすぎなかった。 これらのことから,自立して生活している高齢者のエネルギー摂取量および栄養素別エネルギー摂取比率は食事摂取基準の適正範囲内であったが,食品群別摂取量を見ると男女別に特徴があることがわかった。
著者
八木 稔 佐久間 汐子 宮崎 秀夫
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.375-381, 2000-07-30
被引用文献数
2

フッ化物洗口は,歯のフッ素症のリスクになるかもしれないとして,6歳未満の子どもたちには用いるべきではないとされる場合がある。しかし,日本のようなフッ化物の全身応用がなされていない地域において,そのようなフッ化物洗ロプログラムが歯のフッ素症のリスク要因であるという疫学的な報告はみあたらない。そこで,(1)フッ化物洗口群(非フッ素地区において4歳児からフッ化物洗ロプログラムに参加),(2)天然フッ素群(天然にフッ化物添加された約0.8mg F/lの水を飲用,フッ化物洗口プログラムない,および(3)非フッ素群(非フッ素地区,フッ化物洗ロプログラムない,それぞれの小学校5,6年生を対象に,2〜6歳の間に形成されるエナメル質の歯面領域(Fluorosis Risk IndexのClassification II)におけるエナメル斑の発現について疫学的調査を行った。フッ素性とみなされたエナメル斑の発現については,フッ化物洗口群では,非フッ素群よりも少ない傾向にあったが(オッズ比0.358),統計学的に有意ではなかった。同じエナメル斑の発現は,天然フッ素群では,非フッ素群に比較して有意に多かった(オッズ比3.112)。また,非フッ素性とみなされたエナメル斑の発現は,フッ化物洗口群および天然フッ素群ともに,非フッ素群と比較して少ない傾向がみられたが,統計学的に有意ではなかった。よって,非フッ素地区における就学前4歳児からのフッ化物洗ロプログラムが,歯のフッ素症のリスク要因となるとはいえなかった。
著者
宮崎秀夫 荒尾 宗孝 岡村 和彦
出版者
新潟歯学会
雑誌
新潟歯学会雑誌 (ISSN:03850153)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.11-15, 1999-07
被引用文献数
25

The purpose of this study was to develop clinical classification of halitosis with corresponding treatment needs and was to tentatively classify halitosis patients according to the proposed classification. The classification consists of 3 classes (Ⅰ,Ⅱ,andIII) and 3 sub-classes in class I, that is, physiologic halitosis (Class1-a), oral pathologic halitosis (Class 1-b-1), extraoral pathologic halitosis (Class 1-b-2), Pseudo-halitosis (Class 2) and Halitophobia (Class3). Organoleptic scoring, volatile sulfur compounds (VSC) measurements using a portable sulfide monitor (Halimeter; RH-17 series, Interscan) and/or Gas Chromatograph (GC) were carried out for patients with bad breath complaint at the Breath Odor Clinic in the Dental School Hospital, Niigata University. All patients were examined 3 times in different days and diagnosed by average scores or values. There were 215 patients newly registered at the Clinic during the 1st year from April 1, 1998 to 31 March 1999. After excluding patients with incomplete data in their medical records, 210 patients (71 males and 139 females) were classified according to the proposed classification. Numbers (percentages) of patients with physiologic halitosis (Group 1), oral pathologic halitosis (Group 2), extraoral pathologic halitosis (Group 3), pseudo-halitosis (Group4), and halitophobia (Group5) were 43 (20.5%), 78 (37.1%), 7 (3.3%), 74 (35.2%), and 8 (3.8%), respectively. The mean organoleptic scores of patients in Groups 1 (2.1), 2 (2.6) and 3 (2.5) were higher than those in Groups 4 (1.3) and 5 (1.6). The mean VSC values of patients in Groups 1 (169.0ppb), 2 (235.3ppb) and 3 (210.4ppb) were higher than those in Groups 4 (100.5ppb) and 5 (108.9ppb). Relatively higher VSC values were found even in pseudo-halitosis and balitophobia groups although both had lower level of OLS.本論文の目的は、試案した口臭症の臨床病態分類を公表すること、新潟大学歯学部附属病院口臭クリニックに来院した初診患者をこのクライテリアにより分類することである。口臭は官能検査、ガスクロマトグラフィ、ポータブルサルファイドモニターを用い測定した。初診患者210名のうち、真性口臭症が61%(生理的口臭:21%、口腔由来の病的口臭:37%、全身由来の病的口臭:3%)、仮性口臭症が35%、口臭恐怖症が4%であった。分類されたグループ別に平均官能検査スコア(OLS)をみると、生理的口臭症は2.1と真性口臭症の中では低かったが、仮性口臭症(1.3)と口臭恐怖症(1.6)と比べると明らかに高値を示した。口腔由来の病的口臭グループの平均VSC濃度235.3ppbは、生理的口臭(169.0ppb)、仮性口臭症(100.5ppb)、口臭恐怖症(108.9ppb)に対し有意(p<0.01)に高かった。
著者
清田 義和 佐久間 汐子 岸 洋志 須藤 明子 小林 清吾 宮崎 秀夫
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.307-312, 1997-07-30 (Released:2017-10-20)
参考文献数
19
被引用文献数
12

本研究の目的は,フッ化物ゲルを歯ブラシを用いて塗布する方法による乳歯う蝕予防プログラムの効果を評価することである。う蝕がない1歳6ヵ月児892名を対象とし,希望により3歳まで6ヵ月間隔で受けたフッ化物ゲル歯面塗布の回数によってグループ分けし,3歳6ヵ月の時点でう蝕の発生数を比較した。その結果,定期的に4回の塗布を受けた群のう蝕発生数が最も少なく,全く受けなかった群に比較して平均う蝕発生(dmfs)数で47.5%の有意な差が認められた。本法で有意なう蝕予防効果を得るために,少なくとも年2回の定期的,継続的なフッ化物歯面塗布の実施が必要であることが示唆された。
著者
宮崎 秀夫 花田 信弘 中山 浩太郎 十亀 輝 重岡 利幸 児島 正明 松田 修司 竹原 直道
出版者
九州歯科学会
雑誌
九州歯科学会雑誌 (ISSN:03686833)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.1137-1142, 1986

鹿児島県長島高校生(15&acd;18歳), 181名を対象に, CPITN (WHO)を用いた歯周疾患の疫学調査を行なった.その結果, 長島高校生の9割弱が歯肉出血(Code 1)以上の歯周疾患の症状を呈しており, 歯石沈着(Code 2)以上の所見が認められる者の比率でみると, 北九州の高校生より, 20% (女)&acd;40%(男)高かった.また, 歯周疾患の処置の必要性に関しては, 長島高校生の約90%が口腔清掃指導を必要としており, 80%以上が除石を必要としていた.しかしながら, 複雑な治療を要する者は1名もいなかった.以上の所見より, 集団歯科保健指導や管理が行なわれやすいこの時期(高校生)までに, 歯周疾患に関する徹底した指導, 教育と, スクリーニングの必要性が示唆された.
著者
堀 良子 高野 尚子 葭原 明弘 宮崎 秀夫
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.85-90, 2010-03-25
参考文献数
21
被引用文献数
4 2

&nbsp;&nbsp;歯科関係者の専門的な口腔ケアが要介護高齢者の誤嚥性肺炎を防ぐことに関する研究報告は多いが,リスクのある入院患者の看護者による日常的な口腔ケアを評価した報告は殆どない.そこで,われわれは一般病棟入院患者に実施されている口腔清掃と院内発症肺炎の起炎菌と同じ菌株の口腔からの検出および発熱との関連について検討した.<br> &nbsp;&nbsp;新潟県内4病院の口腔清掃に介助を必要とする40歳以上の入院患者69名を対象とし,清掃の回数および実施内容を記録した.また,黄色ブドウ球菌,MRSA,緑膿菌を対象として口腔内細菌の検出と菌数測定を行い,過去7日間の37.5&deg;C以上の発熱の有無を調査した.これらを経口摂取群と非経口摂取群に分けFisherの直接確率法で評価した.その結果,経口摂取群において口腔清掃が3回/日以上の者で,発熱ありの割合と黄色ブドウ球菌の検出された割合が有意に低かった.一方非経口摂取群においては,歯ブラシを使用している者の方が発熱ありの割合が有意に低かった.以上より,経口摂取者においては頻回の口腔清掃が発熱と口腔内の日和見菌の定着を防止することが示唆され,非経口摂取者においては歯ブラシを用いた機械的な口腔清掃を行うことによって発熱が防止できることが示唆された.<br>
著者
エカナヤケ リラニ メンディス ランジット 安藤 雄一 宮崎 秀夫
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.771-779, 1999-11-30
参考文献数
15

ここ10年以上,スリランカでは児童・生徒の口腔の健康増進を目指して,プライマリーヘルスケアアプローチに基づく数多くの保健計画を実施してきた。また,厚生省は文部省との協力のもと,小学校教師に対し口腔保健の基礎を教育し,口腔保健教育のやり方を訓練してきた。さらに,国民の口腔健康増進のためにマスメディアも重要な役割を担ってきた。しかしながら,これらすべての計画や活動の目標が望ましい行動をもたらすための,口腔保健に関する基礎知識を与えることであるにもかかわらず,児童・生徒の口腔保健知識やその実践の現状を評価することはほとんどなされてこなかった。そこで,この研究は青年を評価対象とし,口腔保健に関する知識,意識,行動の様相を把握し,あわせて,歯磨き頻度に影響を与える要因を調べることを目的に行われた。無作為に抽出された2市および8村の公立学校に在学する11年生(平均年齢15.7歳)492名が,担任の監督下にアンケートを回答した。生徒の大部分はう蝕と歯同病の予防に関する知識は持っていたが,これらの原因についてはいくらかの考え違いがあった。知識と意識に関する平均スコアは,いずれも村の生徒より市内の生徒のほうが有意に高かった。ロジスティック回帰分析の結果,性,居住地,口腔保健知識,および口腔保健に関する情報を受けたかどうかの4項目は,(保健行動の1つである)歯磨き頻度と有意に関連していることが示された。以上の所見より,村の生徒の口腔保健に関する知識,意識,行動は市内の生徒より劣っている,したがって,村の生徒向けに口腔保健計画を改善することによって,口腔保健に関する知識と行動のレベルを高める努力がなされるべきであるという結論を得た。
著者
渡辺 厚 毛利 環 渡邉 直子 渡邉 洋平 宮崎 秀夫 齋藤 功
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13490303)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.142-154, 2009-10-25
参考文献数
43
被引用文献数
2

わが国の不正咬合の疫学調査は独自の基準によるものが散見されるのみで,国際的に比較可能なIndex of Orthodontic Treatment Need(IOTN)を用いた疫学調査はほとんどない.そこで今回,日本人における不正咬合の種類と程度および矯正治療の必要性に関する基礎データの構築を目的に,IOTNを用いた疫学調査を行った.調査対象は,4つの地域の11歳から14歳児,497名としたが,矯正治療経験のある72名(14.5%)は除外した.調査は,レントゲン,研究用模型を利用せず口腔内診査法によりIOTNを算出した.機能と形態の両面から咬合を評価するDHCにおいて「矯正治療必要性あり」(DHC Grade 4,5)と判定された者は34.1%であった.不正咬合の内訳は,叢生17.4%,過度のoverjet 10.1%,萌出余地不足13.2%,永久歯欠損4.0%,過蓋咬合2.6%,交叉咬合2.4%,開咬0%,反対咬合0%であった.一方,客観的審美性の観点から咬合を評価するACにて「矯正治療必要性あり」(AC Grade 8-10)に分類された者は10.4%であった.これらの結果を総合すると,「矯正治療必要性あり」と分類された者は35.5%であった.以上の結果をこれまでの報告と比較すると,矯正治療が必要とされる者の割合は英国の調査結果とほぼ近似していたが,不正咬合の種類としては叢生が約2倍で,不正咬合の特徴は欧州と異なる可能性が示唆された.
著者
葭原 明弘 清田 義和 片岡 照二郎 花田 信弘 宮崎 秀夫
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 = JOURNAL OF DENTAL HEALTH (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.241-248, 2004-07-30
参考文献数
25
被引用文献数
7

日常の楽しみごととして食事をあげる高齢者は多い.本調査では,食欲とQOLの関連をほかの要因を考慮しながら評価することを目的としている.本調査の対象者は70歳の高齢者600人である.QOLを総合的にあらわす指標としてフェイススケールを用いた.生活満足状況について5つの顔の表情を示し,一番実感に近いものを選択してもらった.食欲については質問紙法により情報を得た.さらに,身体的要因,健康行動,社会的要因,口腔内症状について情報を得た.フェイススケールの結果にもとづき,食欲,口腔内症状の合計数およびほかの全身的要因との関連をロジスティック回帰分析により評価した.その際,従属変数をフェイススケールの分布にもとづき2種類のモデル(モデル1,モデル2)を作成した.いずれのモデルにおいても食欲,口腔内症状の合計数,老研式活動能力指標,睡眠時間および性別を独立変数に採用した.その結果,モデル1では,食欲(オッズ比:2.77,p<0.05) ,口腔内症状の合計数オッズ比:1.25,p<.05) ,老研式活動能力指標オッズ比:1.25,D<0.01)が統計学的に有意であった.一方,モデル2では,食欲(オッズ比:3.23,p<0.001),老研式活動能力指標(オッズ比:1.24,D<0.001) ,睡眠時間(オッズ比:1.72,n<0.0l)が統計学的に有意であった.食欲は,モデル1とモデル2において,また,口腔内症状の合計数はモデル1において有意な関連が認められた.この結果は,地域在住高齢者では,食欲とQOLが有意に関連していることを示している.さらに,口腔内症状の改善がQOLの向上には必要であると考えられた.
著者
葭原 明弘 佐久間 汐子 小林 清吾 宮崎 秀夫
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.729-733, 1996-10-30
参考文献数
20
被引用文献数
5

よりう蝕リスクが高いと思われる歯牙に実施したシーラントの保持状況および脱落要因について評価した。対象者は,保育園の4歳児から施設ベースのフッ化物洗口法を経験している小学校の1〜3年生,計356名である。Sticky Fissureに咬合面の歯垢付着状況,歯牙の咬合状態,年齢の3指標を組み合わせシーラントの適応を決定した。分析には,シーラント処置を行った第一大臼歯の小窩裂溝,156ケ所を用いた。調査期間は最短で半年間,最長で3年間である。シーラントの保持率は,半年間経過したもので75.9%〜100%,2年間経過したもので69.0%〜96.8%,3年間経過したもので58.6%であった。う蝕は小窩裂溝156ケ所のうち4ケ所にのみ発生した。また,重回帰分析の結果から,処置時の防湿不良がシーラントの脱落に有意に関わっていることが示された。Sticky Fissureを適応条件としたシーラントプログラムの場合,シーラントを処置する際の充分な清掃および唾液からの防湿がシーラントの保持率を高める上で重要な要因と考えた。
著者
今井 顕 濱嵜 朋子 笠井 幸子 粟野 秀慈 邵 仁浩 安細 敏弘 朴 永哲 宮崎 秀夫 竹原 直道
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.574-584, 2003-10-30

この研究の目的は,韓国人の歯列弓と口蓋の形質の特徴を明らかにすることである.研究には韓国人学生(18〜32歳)から得られた209組(男性105人,女性104人)の上下顎模型を用いた.得られた計測値について,男女間およびこれまでわれわれが報告してきた12集団との比較検討を行った.その結果,韓国人はほとんどの計測項目において有意な性差が認められた.また,男女ともに中央アメリカに住むヒカケ族と多くの項目において有意な差を示した.さらに,韓国人の口腔の形質人類学的住置づけを明らかにするために,クラスター分析,近隣結合法,多次元尺度構成法を行った結果,韓国人は男女ともバリ島民,台湾高山族やヒカケ族よりも日本人,台湾在住の中国人に近いということが明らかとなった.
著者
金子 正幸 葭原 明弘 伊藤 加代子 高野 尚子 藤山 友紀 宮崎 秀夫
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.26-33, 2009-01-30
被引用文献数
6

平成18年度より,地域支援事業の一環として口腔機能向上事業が実施されている.本調査の目的は,口腔機能向上事業が高齢者の口腔の健康維持・増進に与える効果を検討し,今後の事業展開のための指針を得ることである.対象者は65歳以上の高齢者で,基本健康診査を受診し,厚生労働省が示す特定高齢者の選定に用いる基本チェックリストの「半年前に比べて固い物が食べにくくなりましたか」「お茶や汁物等でむせることがありますか」「口の渇きが気になりますか」の3項目すべてに該当する55名である.対象者に対して,口腔衛生指導や集団訓練としての機能的口腔ケアからなる口腔機能向上事業を,4回または6回コースとして3ヵ月間実施した.口腔衛生状態,口腔機能およびQOLについて事業前後の評価を行った.その結果,反復唾液嚥下テスト(RSST)積算時間は,1回目:事前7.5±5.6秒,事後5.6±3.1秒,2回目:事前16.2±9.7秒,事後12.4±6.9秒,3回目:事前25.7±14.7秒,事後19.4±10.9秒と改善がみられ,2回目,3回目について,その差は統計学的に有意であった(p<0.01).口腔機能についてはその他のすべての項目について,統計学的に有意な改善がみられた.本調査より,新潟市における口腔機能向上事業は,高齢者の摂食・嚥下機能をはじめとした口腔機能の維持・増進に有効であることが認められた.
著者
安藤 雄一 高徳 幸男 峯田 和彦 神森 秀樹 根子 淑江 宮崎 秀夫
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.248-257, 2001-07-30
被引用文献数
14

成人を対象とした歯科健診は低受診率による選択バイアスが生じやすいことから,1999年度に行われた第4回新潟県歯科疾患実態調査では,従来の歯科健診のみによる方式から,あらかじめ調査対象者全員に質問紙を配布して歯科健診を行う方式に切り替えた。本論文では,歯科健診の受診率と質問紙の回答率,健診受診者と非受診者の特性を比較することにより,新たに採用した調査方式の有用性を評価することを目的とした。調査地区は,新潟県内14保健所に1〜2地区を割り当て,23地区を抽出した。調査対象者は,対象地区内に在住する1歳以上の全住民3,561名とした。歯科健診の受診率は35.3%と低く,年齢・性差が大きかった昿質問紙の回収率は83.2%と高く,年齢・性差は小さかった。質問紙の各項目について健診受診の有無別に比較した結果,自己評価による現在歯数は60〜70歳代で受診者のほうが多かった。これは,歯科健診のみによる従来型の調査方法を採用し,受診率が今回のように低い場合,高齢者の現在歯数が過大評価されることを示唆している。また,歯科健診の受診者は,非受診者に比べて,口腔の自覚症状を有する割合が高く,歯科医院を早めに受療し,歯石除去経験のある割合が高かった。以上より,今回新たに採用した調査方式は,対象集団の実態を正しく示すために有用と考えられた。