著者
渡辺 恵 伊藤 舜将 馬 文超 山崎 大
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.104-121, 2022-03-05 (Released:2022-03-05)
参考文献数
40

アンサンブル洪水予測は長いリードタイムを確保でき,不確実性も表現できるため,早期警報としての活用が期待される.一方,この予測方法は確率的情報を扱うなど従来型の予測とは性質が異なり,効果的な活用ノウハウが確立されていない.本研究では,運用中の海外先行システムを調査し,予報者側とユーザーとのコミュニケーションに着目して分析した.まず,予測情報の伝達手段となる可視化手法を4つに分類し,特徴と利用法を整理した.これにより,ユーザーの要望も反映しつつ,システム不確実性を考慮し流量等の絶対値からリターンピリオド等の危険度に変換する,危険度予測一貫性の確認を可能にするなど,警報発令等の判断を支援する可視化方法を利用していることが分かった.またワークショップ等を通してユーザーと意見交換することにより,空振りの可能性のある低確率大規模災害の適切な予報が行われたり,予測情報を早期警戒に活用する際の法制度の課題が顕在化したり,ユーザーフィードバックはシステム運用改善に繋がった.アンサンブル洪水予測の効果的活用には,予測技術の高度化だけでなくユーザーとの双方向コミュニケーションが重要である点が明らかとなった.