著者
馬 旭偉 下川 敬之
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.261-269, 1998-03-15
被引用文献数
6 5

本研究では, エチレン処理したバナナ果実(Musa sapientum L.)の果皮より調製した粗酵素液中に, クロロフィルaを分解する酵素が存在することを明らかにした.また, この酵素とその反応について次のことを明らかにした.1) H_2O_2と2, 4-DCPが必要なことからペルオキシダーゼであること, 2) Tiron, Mn^<2+>, hydroquinone, L-ascorbate sodium, n-propyl gallate, salicylhydroxamic acid, KCN, NaN_3で阻害されるため, この酵素反応にO^-_2とラジカルが関与していること, 3) 2, 2'-bipyridyl, Tironにより阻害されることは, この酵素反応にFe^<2+>あるいはFe^<3+>が関与していること, 4) NaN_3に対する阻害程度の違いからクロロフィル分解ペルオキシダーゼはグアヤコールペルオキシダーゼとは別のものであること, 5) pHのピークが5.2, 5.8と6.4にあることから, アイソザイムが存在すること, 6) タンパク質量に対する反応量は直線的であること, 7)基質のKm値は16.5μMであること, 8) H_2O_2のKm値が20.44μMで, この値は既知のペルオキシダーゼに比べ低い値である(高い親和性をもつ)こと, 9) これらの値と性質は, この酵素が生体内で作用している可能性があること.さらに, 反応液の可視部でのスペクトルの変化, 特に, 経時的な波長のシフトとソーレーバンドの消失と差スペクトルの結果から, クロロフィルaは開環したクロロフィル代謝産物(Ex 350nm, Em 465nm)に分解するものと考えられる.