著者
魚住 祥二郎 馬場 俊之 吉田 仁
出版者
日本門脈圧亢進症学会
雑誌
日本門脈圧亢進症学会雑誌 (ISSN:13448447)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.113-121, 2015 (Released:2017-12-27)
参考文献数
19
被引用文献数
2

食道胃静脈瘤を合併した肝硬変184例に対する内視鏡的治療後の生存に寄与する因子について検討した.全体の累積生存率は1年:84.0%,3年:67.3%,5年:50.7%であり,生存に最も寄与する因子は肝細胞癌の合併であった.経過観察期間における肝細胞癌の合併により「肝細胞癌非合併群」と「肝細胞癌合併群」に分類し,さらに肝細胞癌合併群を進行肝細胞癌(Vp3-4,肝外転移,治療抵抗性肝細胞癌)の合併の有無により「進行肝細胞癌非合併群」と「進行肝細胞癌合併群」に分類した.進行肝細胞癌合併群は,他の2群に比較し有意に予後が不良であった.また,進行肝細胞癌合併群のうち内視鏡的治療時にすでに進行肝細胞癌を合併していた「治療時進行肝細胞癌合併群」は,内視鏡的治療後に進行肝細胞癌を合併した「治療時進行肝細胞癌非合併群」に比較し有意に予後が不良であり,門脈腫瘍塞栓(Vp3-4)を高率に合併していた.食道胃静脈瘤を合併した肝硬変に対する内視鏡的治療後には肝細胞癌のコントロールが重要であり,門脈腫瘍塞栓(Vp3-4)に進展する前に内視鏡的治療を行うような経過観察が必要であると考えられた.