著者
馬籠 信之
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.341-345, 1996-06-10 (Released:2010-02-05)
参考文献数
10

本稿では,水・油・界面活性剤から成る系における自発的な界面運動について記述している。化学種の濃度が水相と油相間で非平衡である時,界面で様々な自励振動が見られる。今回は,その自励振動のうち,特に界面張力の周期的な増加に注目し,界面張力変化と界面運動との相関について説明した。界面張力が急激に増加すると接触角も急激に変化し,その結果界面張力間のバランスが崩れて運動が起こることを明らかにした。また,油水系では界面運動の駆動力は水相と油相間での界面活性剤の濃度勾配である。すなわち,等温条件下で化学的なエネルギーから機械的な運動を直接取り出している系であると言える。これは,例えば筋肉におけるエネルギー変換の機構と比較すると1)非平衡状態で起こり,2)熱エネルギーを介さない化学→機械エネルギーの直接変換系であり,3)空間的に非対称性を取り入れることによって運動方向の制御が可能である,といった点などにおいて共通性があり,生物の運動のメカニズムを探索する上で有効であると考えている。