- 著者
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最田 優
- 出版者
- The Surface Science Society of Japan
- 雑誌
- 表面科学 (ISSN:03885321)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, no.4, pp.238-242, 1993-06-01 (Released:2009-08-07)
- 参考文献数
- 7
ウイスキーのおいしさは,その由来から<穀物のうまさ><醸しのうまさ><蒸留のうまさ><熟成のうまさ>の四つに分けられる。中でも熟成のうまさを兼ね備えていることがウイスキーを世界中で飲まれる酒に育て上げた大きい要因と考えられる。ウイスキーの熟成はオーク樽に長い年月貯蔵して初めて得られるものであり,ウイスキーを飲むことは時間を飲むことだといえる。 樽貯蔵中には樽材を通した蒸散,樽材成分の分解溶出,種々の成分間の反応などの物質の変化と共に,物性の変化がゆっくりと起こる。樽貯蔵はアルコール度数60%前後で行われているが,貯蔵中にエタノールと水の分子会合が進み,大きいクラスターが貯蔵年数と共に増加する。また、熟成したウイスキーなどでは誘電率の低下や,気相でのエタノール蒸気分圧の低下などが知られている。このような溶液の状態の変化が,物質の変化と共にウイスキーの味わいのまろやかさをつくりあげている。 最近のクラスターの解析から幅広い濃度でのエタノール水溶液の特徴がわかってきている。ウイスキーを水割りで飲む場合の濃度は溶液の状態が大きく変化する範囲にあり,水割りとして好まれる濃度との関係でおおいに興味をひかれる。