著者
高久 俊 高久 千鶴乃 平馬 直樹 高橋 秀実
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.202-211, 2017 (Released:2017-12-26)
参考文献数
14

衛気虚証患者の体質改善に対する少量の玉屏風散末内服の有用性について報告する。対象は易感冒,アレルギー性鼻炎,発汗異常のうち1-2つを主訴とする患者30例である。玉屏風散末は黄耆,白朮,防風の3生薬を粉末にして混合したものを使用した。その有効性については内服開始6ヵ月後あるいは1年後に自覚症状の改善度をスコア化して評価した。玉屏風散末内服は24例(80.0%)で有効(著効19例,有効5例)であり,主訴別では特に易感冒(17例中著効12例を含む16例で有効)およびアレルギー性鼻炎(13例中著効6例を含む10例で有効)に対して高い有用性を示した。また有効症例全24例中,一日内服量0.7-1.4g の症例が19例(79.2%)を占めた。以上,構成する3生薬いずれも保険適応があることを勘案すると,玉屏風散末は少量内服で高い効果を示す経済的な衛気虚証患者の体質改善薬となりうることが示唆された。
著者
高久 俊 大薗 英一 高久 千鶴乃 平馬 直樹 高橋 秀実
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.28-33, 2016-01-20 (Released:2016-05-27)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

慢性腎臓病で血液透析療法中の患者に合併した手根管症候群の随伴症状の緩和に五積散が有用であった3例について報告する。症例1は77歳女性。主訴は夜間就寝後の両腕痛による睡眠障害。症例2は66歳女性。主訴は夜間就寝後の右上下肢の電撃痛による睡眠障害。両症例ともに手根管症候群に対して複数回の手術歴があるが,その後も症状緩和のため定期的に手根管部へのステロイド局注を必要としていた。症例3は54歳男性。主訴は左手指先の痺れ。手根管症候群手術により同症状は一旦消失していたが再燃。3症例いずれも乏尿無尿の透析患者であるため体内に湿が蓄積されやすい状態にあること,また温めることにより症状の若干の改善をみたことから寒と湿が病態形成に関与していると考え五積散を処方したところ,速やかに自覚症状の改善が認められた。以上の結果は,寒湿の存在に注目した手根管症候群に対する漢方治療の有効性を示唆するものと思われた。