著者
青木 弘之 藤岡 紀昭 阿部 正典 松岡 由美子 大森 容子 葉山 修陽 佐藤 茂 大薗 英一
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.135-141, 2012-02-28 (Released:2012-02-29)
参考文献数
16

血液透析施行時,透析開始直後から血液回路内に淡黄色顆粒物が付着し回路内凝固などのトラブルの原因となることがある.冬季に多く,プライミング時に血液回路を37℃まで加温すると回避される場合がある.今回この顆粒物の本態を検討し成因を推定した.電子顕微鏡所見から,顆粒物は活性化血小板による血小板血栓であった.5名の症例に性差,透析歴や原疾患の共通性はなく,回路内凝固以外共通症状もなかった.低温刺激に関与するクリオグロブリン血症や寒冷凝集素症も認められず,ヘパリン起因性血小板減少症関連の抗体もすべて陰性であった.顆粒物が形成されない透析患者と比較して血液検査上の差はなく血小板数も正常範囲にあったが,ヘパリン化による平均血小板容積(MPV)の低下率が大きかった(p=0.016).未分画ヘパリンの増量は顆粒物形成に影響しなかったが,プライミング時の回路内加温および低分子ヘパリンやナファモスタットへの抗凝固薬の変更で抑制され回路内凝固の回避に成功した.この病態は低体温下手術時の全身ヘパリン化で認められる血小板減少症に類似し,淡黄色顆粒物の成因として回路内の低温刺激と高分子分画のヘパリンが複合的に関与していると考えられた.
著者
高久 俊 大薗 英一 高久 千鶴乃 平馬 直樹 高橋 秀実
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.28-33, 2016-01-20 (Released:2016-05-27)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

慢性腎臓病で血液透析療法中の患者に合併した手根管症候群の随伴症状の緩和に五積散が有用であった3例について報告する。症例1は77歳女性。主訴は夜間就寝後の両腕痛による睡眠障害。症例2は66歳女性。主訴は夜間就寝後の右上下肢の電撃痛による睡眠障害。両症例ともに手根管症候群に対して複数回の手術歴があるが,その後も症状緩和のため定期的に手根管部へのステロイド局注を必要としていた。症例3は54歳男性。主訴は左手指先の痺れ。手根管症候群手術により同症状は一旦消失していたが再燃。3症例いずれも乏尿無尿の透析患者であるため体内に湿が蓄積されやすい状態にあること,また温めることにより症状の若干の改善をみたことから寒と湿が病態形成に関与していると考え五積散を処方したところ,速やかに自覚症状の改善が認められた。以上の結果は,寒湿の存在に注目した手根管症候群に対する漢方治療の有効性を示唆するものと思われた。
著者
佐治 守 薄木 玲子 茨木 信博 葉山 修陽 大薗 英一 大國 寿士
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.341-345, 2003-06-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
18
被引用文献数
1 4

Benzalkonium chloride is most commonly used as a preservative for ophthalmic solutions at a dosage of 50 μg/mL. In this study, we evaluated the antibacterial activity of this preservative against 16 species and64 clinically isolated strains. Benzalkonium chloride demonstrated a good effect on gram-positive cocci, the minimum inhibitory concentrations (MICs) of benzalkonium chloride to Staphylococcus epidermidis and Staphylococcus aureus including MRSA were less than 12.5μg/mL. On the other hand, benzalkonium chloride was not effective against gram-negative rods ; 95% (42/44) of gram-negative rods strains were not susceptible after treatment with 50μg/mL of benzalkonium chloride. Especially, the MICs of benzalkonium chloride to clinically isolated pseudomonas aeruginosa were over 200μg/mL. These results suggest that benzalkonium chloride as preservative for ophthalmic solutions in effective on gram-positive cocci even when used in concentrationsonly one fourth times as much as those commercially available and to gram-negative rods when used in concentrations which may cause damage to the comeas. The use of lower concentration of benzalkonium chloride may therefore make it possible to reduce the degree of damage to the cellular components of the cornea.