著者
高橋 秀実
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-9, 2013 (Released:2013-07-20)
参考文献数
8

1990年代に入り,現代免疫学は体内免疫システムを,主として体表面に配置された異物(邪気)に対する記憶形成を伴わない「自然免疫」と血液中を循環し記憶形成をともなう「獲得免疫」に大別し,その認識抗原の実体ならびに機能について研究を展開してきた。一方,2000年以上前に記載された「黄帝内経」には,我々の体内には邪気と闘う「衛気(えき)」と「営気(えいき)」の2つのシステムが構築されており,前者「衛気」は体表面に配置され発汗調節を担い,「濁」である物質群を制御するのに対し,後者「営気」は「清」と呼ばれる純化された物質を選別し「栄養素」として「血管」内に送り込み,血液の運行を含め全身を統御するものであることが記載されている。本総説では,以上の点を踏まえ,「衛気」と自然免疫;「営気」と獲得免疫との関連性について概説し,「東洋医学」と「西洋医学」とを統合した新たな「医学」を模索する上への礎としたい。
著者
高久 俊 高久 千鶴乃 平馬 直樹 高橋 秀実
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.202-211, 2017 (Released:2017-12-26)
参考文献数
14

衛気虚証患者の体質改善に対する少量の玉屏風散末内服の有用性について報告する。対象は易感冒,アレルギー性鼻炎,発汗異常のうち1-2つを主訴とする患者30例である。玉屏風散末は黄耆,白朮,防風の3生薬を粉末にして混合したものを使用した。その有効性については内服開始6ヵ月後あるいは1年後に自覚症状の改善度をスコア化して評価した。玉屏風散末内服は24例(80.0%)で有効(著効19例,有効5例)であり,主訴別では特に易感冒(17例中著効12例を含む16例で有効)およびアレルギー性鼻炎(13例中著効6例を含む10例で有効)に対して高い有用性を示した。また有効症例全24例中,一日内服量0.7-1.4g の症例が19例(79.2%)を占めた。以上,構成する3生薬いずれも保険適応があることを勘案すると,玉屏風散末は少量内服で高い効果を示す経済的な衛気虚証患者の体質改善薬となりうることが示唆された。
著者
高橋 秀実
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
Journal of Nippon Medical School (ISSN:13454676)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.410-414, 2002 (Released:2002-10-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1
著者
高橋 秀実
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の結果、Vγ1Vδ1型のT細胞レセプター(TCR)を発現したγδT細胞株(clone 1C116)の樹立に成功し、このT細胞株がTCR特異的な抗原分子に遭遇した場合、IL-2を放出することを見出した。このシステムを利用し、天然生薬中に存在する糖質結合型フラボノイドである陳皮由来のヘスペリジン及び枸杞子由来のリナリンがVγ1Vδ1型T細胞を刺激することを発見し、これらヘスペリジンあるいはリナリンの刺激でVγ1Vδ1型γδ細胞が活性化され、IL-5並びにIL-13、及びMIP-1α、MIP-1β、RANTESが放出され、細胞内でのR5-型HIV-1の増殖が抑制されることを確認した。
著者
高久 俊 大薗 英一 高久 千鶴乃 平馬 直樹 高橋 秀実
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.28-33, 2016-01-20 (Released:2016-05-27)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

慢性腎臓病で血液透析療法中の患者に合併した手根管症候群の随伴症状の緩和に五積散が有用であった3例について報告する。症例1は77歳女性。主訴は夜間就寝後の両腕痛による睡眠障害。症例2は66歳女性。主訴は夜間就寝後の右上下肢の電撃痛による睡眠障害。両症例ともに手根管症候群に対して複数回の手術歴があるが,その後も症状緩和のため定期的に手根管部へのステロイド局注を必要としていた。症例3は54歳男性。主訴は左手指先の痺れ。手根管症候群手術により同症状は一旦消失していたが再燃。3症例いずれも乏尿無尿の透析患者であるため体内に湿が蓄積されやすい状態にあること,また温めることにより症状の若干の改善をみたことから寒と湿が病態形成に関与していると考え五積散を処方したところ,速やかに自覚症状の改善が認められた。以上の結果は,寒湿の存在に注目した手根管症候群に対する漢方治療の有効性を示唆するものと思われた。
著者
高橋秀実著
出版者
小学館
巻号頁・発行日
2002