著者
高倉 栄男
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.67, 2020 (Released:2020-01-01)
参考文献数
2

細胞の膜の張力はその生理活動において厳密に制御されている.そのため,張力が正常に働かない場合には様々な機能異常をきたし,例えばエンドサイトーシスの阻害や細胞分裂の遅れが生じる.よって生細胞において膜の張力を測定できれば,生命現象を理解する上で重要な知見が得られると考えられる.現在のところ,光ピンセットによる張力測定が行われているが,測定値の取得が複雑なこと,測定そのものが張力に影響を与えてしまうことが欠点として挙げられる.また,原理的に細胞内小器官の張力測定は行えないため,この問題の克服には小分子プローブによる張力測定法が必要とされていた.本稿では,生体膜の張力を蛍光寿命にてモニターできる蛍光プローブを用いて,細胞内小器官の膜の張力イメージングを行った研究について紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Colom A. et al., Nat. Chem., 10, 1118-1125(2018).2) Goujon A. et al., J. Am. Chem. Soc., 141, 3380-3384(2019).