著者
佐藤 力 高原 政利 宇野 智洋 三田地 亮 原田 幹生
出版者
一般社団法人 日本整形外科スポーツ医学会
雑誌
日本整形外科スポーツ医学会雑誌 (ISSN:13408577)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.7-11, 2022 (Released:2022-03-31)
参考文献数
8

上腕骨内側上顆裂離(裂離)のある野球選手44例(平均年齢11歳)の保存治療成績を調査した.全身コンディショニングを行い,投球休止は平均55日であった.経過観察期間は平均8ヵ月(最低3ヵ月)であった.肘痛の再発は14例であった.骨癒合は40例に得られ,そのうち29例では骨癒合後に裂離の再発はなく,11例で骨癒合後に裂離の再発がみられた.裂離が再発した11例のうち,9例では再癒合したが,2例では再癒合はなかった.4例は経過中に骨癒合は得られなかった.最終観察時に未癒合だった群では初診時年齢が有意に低かった.骨癒合前に投球を開始した群では再発や未癒合が有意に多かった.低年齢選手や骨癒合前の投球には注意を要する.
著者
三田地 亮 高原 政利 佐藤 力 小野 秀俊 宇野 智洋
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.117-121, 2021 (Released:2021-11-26)
参考文献数
6

目的:肘痛と主観的評価,身体所見,および投球動作の関連性を分析すること.対象と方法:中学野球選手52名を検診し,肘痛,自己評価式の肘痛スコア(痛みなし:0点~最悪の痛み:40点),投球フォーム自己評価(良:30点~不良:0点 ),身体所見,および投球動作を調査した.結果:肘痛は8名にあった.自己評価式の平均は肘痛スコア:4.1点,投球フォーム自己評価:22.2点であり,軸脚の蹴りは肘痛なし群が有意に良好であった.身体所見の陽性率はcombined abduction test:32.7%,horizontal flexion test:25.0%,およびstraight leg rising:20.6%であった.動作解析ではsingle plane:33.3%,アーリーコッキング期軸脚股関節肢位の不良 :92.2%,良:7.8%であった.考察:肘痛と軸脚の蹴りには関連性があった.
著者
原田 幹生 高原 政利 村 成幸 丸山 真博 大石 隆太 宇野 智洋 佐竹 寛史 結城 一声 鶴田 大作 高木 理彰
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.564-568, 2017

Lateral Scapular Slide Test(以下LSST)は,肩甲骨の位置を評価し,肩甲骨下角とその高さの脊柱との距離で示される.本研究の目的は,成長期の野球選手において,LSSTと関連する因子について検討することである.野球選手382名を対象とした(小学:185名,中学:133名,高校:64名).小中高の順序で,肩痛あり(26,29,44%),投球パフォーマンススコア(最悪0-100%最高)(80,79,70%)であった.LSSTは,小中高の順序で,投球側(7.8,8.5,9.5 cm),非投球側(7.8,8.4,9.3 cm),左右差(投球側と非投球側の差)(0.0,0.1,0.2 cm)であり,左右差が1 cm以上ある選手は(10,16,25%)であった.僧帽筋下部の筋力低下は,小中高の順序で,(23,58,45%)であった.LSST(左右差)は,中学生では関連する因子はなかったが,小学生では,投手,肩痛あり,および低い投球パフォーマンスと関連し,高校生では,投手と関連していた.LSST(左右差)は,小中高いずれにおいても,僧帽筋下部筋力と関連はなかった.
著者
宇野 智洋 高原 政利 原田 幹生 丸山 真博 高木 理彰
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.254-259, 2017

<p> 背景:本研究の目的は,野球選手における肘内側側副靱帯損傷(以下,MCL)の保存療法成績と,保存療法に反応しない危険因子を調査することである.</p><p> 対象と方法:肘MCL損傷を有する68名の野球選手を後ろ向き調査した.平均年齢は16.8歳(12~24歳)であった.診断基準は,肘内側痛,MCL直上の圧痛,moving valgus stress test陽性,以上3項目を満たすもので骨端線閉鎖前の内側上顆裂離を除外した.保存療法の平均観察期間は4.4か月(1~15か月)であった.3か月以内の野球への復帰状況を調査した.</p><p> 結果:3か月以内の完全復帰は23名(34%),不完全復帰は21名(31%),復帰不能は21名(31%),および不明は3名(4%)であった.</p><p> 結論:保存療法に反応しない危険因子は,初診時に高年齢,主観的評価の肘痛,KJOCスコアが不良,外反ストレスX線で不安定あり,MRIで靱帯高信号が50%以上,および肩甲上腕関節の柔軟性不良であった.</p>
著者
原田 幹生 高木 理彰 村 成幸 丸山 真博 宇野 智洋 佐竹 寛史 鶴田 大作 結城 一声 大石 隆太 高原 政利
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.548-551, 2018

関節内インピンジメント(インピンジ)は,投球動作の肩外旋時に,腱板と後上方関節唇が接触し,肩痛を生じる病態である.本研究の目的は,中学野球選手に生じるインピンジの頻度を調べ,後方タイトネス(タイトネス)とインピンジの関係を検討することである.中学野球選手154名を対象とした.投球側の肩痛(なし0点-最悪40点)の平均点は8.0点(1~36)であった.タイトネスは59名(38%)であった.fulcrumテストとrelocationテスト陽性をインピンジとすると,12名(8%)に認められた.平均の肩痛は,いずれもなし(n=87):2.3点,タイトネス単独(n=55):3.6点,インピンジ単独(n=8):9.1点,両者の合併(n=4):26.0点であり,タイトネスとインピンジの合併は,他の3群に比べ,有意に高かった(p<0.05).インピンジにタイトネスが合併すると,肩痛が有意に強くなっていた.タイトネスのため,インピンジによって加わる腱板への圧力がさらに増大し,肩痛が強くなったと推測された.