著者
木暮 信一 斎藤 伸明 高塚 和也 土屋 孔明 阿部 拓也 鈴木 義和
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.18-25, 2009-04-15 (Released:2010-08-13)
参考文献数
28

低出力レーザー照射(LLI)が末梢神経の伝導阻害を起こし鎮痛効果をもたらすことが報告されているが,その効果の神経線維特異性など不明な点が多い.そこで本研究では,皮膚に触刺激や痛刺激を与えたときの皮膚知覚神経応答を対象として,その応答に対するLLI効果を検討した.実験にはアフリカツメガエル(Xenopus laevis)の背側皮膚-知覚神経標本を用いた.1標本において3-5本の知覚神経を分離した.皮膚をリンガー液に浸し,脊髄端を糸で結んだ知覚神経を記録電極に装着した.それぞれの神経の受容野を手動のピンセットで確認してから,マニピュレータに装着した外径1mmの針(痛刺激)とボールペン(触刺激)で5秒間の刺激を3回ずつ行い,刺激で誘発する知覚神経応答をマルチユニット活動として記録した.コントロールを記録してから,半導体固体レーザー(532nm, 808nm; 60mW, CW)を受容野に照射して(照射面積:28.3mm2)同様の刺激を繰り返した.分離した1本の知覚神経には数10本の神経が含まれているので,さまざまな振幅(100-1200μV)の,さまざまなパターン(tonic, phasic typeなど)の応答が混在して記録された.S/N比が高く明瞭にユニットとして分離できたものをスパイク・ヒストグラムを用いて200μV毎のユニットに分類した.さらに基準を設定して,各ユニットをtactile-specific(TS),tactile-dominant(TD),pain-specific(PS),pain-dominant(PD),othersに分類した.それらのユニット数はTSが8,TDが26,PSが17,PDが35個であった.532nmのレーザー照射はそれら分類されたユニットの感覚応答を照射前を100%とした場合6-55%のレベルに減弱するまで抑制した(いずれのタイプでも照射前の応答と比較して有意に抑制された:p