著者
山崎 文之 高安 武志 栗栖 薫
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.373-383, 2017 (Released:2018-04-14)
参考文献数
48

小児に発生するびまん性グリオーマは脳幹部の橋や視床に好発し,橋発生はdiffuse intrinsic pontine glioma(DIPG)と呼ばれてきた.近年,遺伝子研究の進歩により橋・視床に発生した小児のびまん性グリオーマにおけるヒストンH3-K27M遺伝子変異が発見された.そして,WHOの2016年updateにおいてdiffuse midline glioma,H3 K27M-mutant(grade 4)として新しく定義された.Diffuse midline gliomaではヒストンのH3バリアントのH3.3をコードする遺伝子H3F3A K27M変異が最も多く,H3バリアントのH3.1をコードする遺伝子HIST1H3B K27Mが2番目に多い.これらの遺伝子変異を持つ腫瘍はIDHの遺伝子変異,EGFRの遺伝子増幅やPTEN変異などを基本的には認めない.その他,小児の大脳半球の高悪性度グリオーマではH3.3 G34R,G34V変異が多いと報告された.ヒストンの遺伝子変化によるtumorigenesisは,成人のびまん性グリオーマ,膠芽腫とは異なるため,同じような考えで治療することはできず,重要な課題である.しかし,現実的には現段階での治療手段は限られている.本教育講演ではWHOの2016年updateで遺伝子異常に基づいて再構成された成人のびまん性グリオーマの定義について概説した.続いて小児の高悪性度グリオーマについて,特に脳幹部グリオーマを中心としたdiffuse midline glioma,H3 K27M-mutant,epithelioid glioblastoma,diffuse leptomeningeal glioneuronal tumorの臨床所見と画像診断,化学療法,放射線治療,分子標的療法,手術の考え方,支持療法などについて概説した.