著者
高宮 正之
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

屋久島のミヤマノコギリシダ複合体(ミヤマノコギリシダ、ホソバノコギリシダ、オオバミヤマノコギリシダ、ヒロハミヤマノコギリシダの4種とそれらの推定雑種)集団について、外部形態、体細胞染色体数、減数分裂の挙動、胞子稔性、核と葉緑体遺伝子を用いた分子遺伝学的分析を行い、雑種形成と種分化について解析した。屋久島では、これら4種間で複雑な雑種形成や戻し交雑が繰り返されていることがわかった。これらの結果、シダ植物における初めての例となる倍数体複合体の浸透性交雑を実証し、複雑なミヤマノコギリシダ複合体の形態変異の一因を明らかにした。
著者
高宮 正之 渡邊 充 小野 莞爾
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.89-121, 1998-02-28

日本産ミズニラ属(Isoetes)植物のサイトタイプ6種について, 各々の形態学的・解剖学的形質と地理的分布について比較検討し, 分類学的取り扱いを整理した。その結果, 日本産ミズニラ属植物には, 以下の4種1雑種1変種が認められた:I. asiaticaヒメミズニラ(二倍体), I. japonicaミズニラ(六倍体), I. pseudojaponicaミズニラモドキ(新種;八倍体), I.× michinokuanaミチノクミズニラ(新雑種;ミズニラとミズニラモドキの種間雑種で七倍体), I. sinensis var. sinensisシナミズニラ(狭義;四倍体), I. sinensis var. coreanaオオバシナミズニラ(新称新組み合わせ;六倍体)。ミズニラモドキとミチノクミズニラは, 大胞子が網目状模様を, 小胞子が針状突起を持つことで特徴付けられる。ミズニラモドキは, 稔性のある胞子を作り有性生殖するのに対し, ミチノクミズニラは, 不稔性のF_1雑種である。シナミズニラとオオバシナミズニラとは, 葉の断面の形や, 小胞子の大きさ・孔辺細砲長などによって区別される。
著者
高宮 正之 宮本 旬子 綿野 泰行 滝尾 進
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、まずゼンマイ属(Osmunda,x=22)について18SrDNA座の詳しい調査を行った。その結果、遺伝子座はシロヤマゼンマイでは1座のみであったものの、ゼンマイとヤシャゼンマイでは複数の座があることが確認された。また、複数座をもつ種ではシグナルに大小が見られた。このことは上記3種は元から二倍体で遺伝子座の重複は無く、ゼンマイとヤシャゼンマイの共通祖先においてrDNA座の一部の転座が起こった、あるいは上記3種の共通祖先で既に遺伝子座の重複が起こっておりシロヤマゼンマイでのみ1対を除いてサイレンシングは終了し、ゼンマイとヤシャゼンマイではサイレンシングの途上であるなど、様々な解釈が可能である。それゆえ系統的に離れた様々な分類群にFISH法を適応するため、染色体数の調査をおこなった。オシダ属(Dryopteris,x=41)では23分類群調査し、12が二倍体、カナワラビ属(Arachniodes,x=41)では44のうち27が二倍体、ノコギリシダ属(Diplazium,x=41)では、54のうち13が二倍体だった。ノコギリシダ属については、rbcLによる比較から二倍体種は様々な系統群に含まれていて、系統的にはばらばらであることが判明した。ノコギリシダ属2種、カナワラビ属1種、オシダ属1種を用いたrDNA座による調査でも複数の座が確認された。ゼンマイ属の結果と合わせると、検討した種では二倍体レベルで共通して複数の座があり二倍体種は、もともと高次の染色体数を持っていた可能性が示唆された。