著者
今井 博康 高志 博明
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.31-41, 2013

国家資格化後,新人精神保健福祉士の急増をみる一方で,若手精神保健福祉士の転退職も増加の一途をたどっている。障害者総合支援法により必置義務がなくなったことを背景とした雇用の不安定性も無視できないだろう。しかし筆者らに届く転退職に関する相談では,業務上抱えた悩みやジレンマを適切に扱ってくれる職場上司や先輩が存在しないという声が少なくない。そこで本報告では,比較的経験の浅い精神保健福祉士へのグループインタビューを実施し,転退職に至る要因がどこにあるかについて,就職当初の動機からその後の業務内容,抱えたジレンマとそれへの対処を経過的に探り,新人精神保健福祉士養成に必要な手立てを検証した。その結果,所属機関の業務に従事する中で感じる課題やジレンマについて,各人なりの自己点検を行っているものの,その自律性を支えるものとして支持的スーパービジョンの存在が浮上した。またインタビュー結果から,養成に当たる精神保健福祉士や上司,養成校,専門職能団体に求められる役割を検討した。