著者
尾形 良子 今野 洋子
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.67-71, 2014

現在,所有明示措置の実施率と不妊去勢手術の実施率は増加傾向にある一方で,多頭飼育崩壊の問題は多発しており,深刻化している。多頭飼育崩壊にいたるまでには,避妊去勢の未実施という直接的な要因の他に,飼養者の精神疾患を含む健康状態の悪化や,経済的問題や人間関係,高齢化,その他の問題など,複数の要因が影響していることが把握された。多頭飼育崩壊の背景や要因を検討する中で,改めて,動物の適正飼育の必要性が捉えられた。
著者
菊地 達夫
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of the Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.165-170, 2015

本研究は,九州地方におけるアイヌ語系地名の残存の可能性について,福岡県の「志登」地名を事例として,若干の考察を行うものである。具体的には,先行研究の成果を述べ,地図,景観写真,文献資料の情報をもとにアイヌ語系地名の可能性について検証した。志登は,アイヌ語地名の可能性が高いと考えられる。その理由として,アイヌ語説の意味となる「峰」や「舌状丘陵」の双方の可能性を含む点を挙げることができる。加えて,志登一帯は,交易地であり,他地域からの文化的要素を流入しやすい地理的環境も有していた。他方,日本語説で考えた場合,志登は,「湿地」や「川の下流」の意味としても一致する。よって,福岡県の志登は,語源をアイヌ語説から日本語説に転化となった地名の可能性がある。
著者
大宮司 信
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.35-40, 2015

関西にある円応教を対象とし,教祖が体験した神がかりがどのように継承され,どのように変容していったかを,「修法」という同教団の宗教儀礼を通して検討した。
著者
森 一生
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.143-149, 2012

『人々が生きる気力を取り戻す場所としての劇場』,『様々な人が出会い新たなコミュニティーを生み出す場所としての劇場』の構築の動きは,ここ数年,国や地方自治体や中央のアーティスト,研究者などの『声』となって論じられている。(その例,劇作家・演出家で,内閣官房参与でもある・平田オリザ氏は,2010年7月6日「劇場/新時代への展望」と題し,札幌市(かでる27)で講演。また,2010年12月5日にも札幌(キューブガーデン)で(第一部)「芸術立国から10年,演劇の未来」と題し講演。(第二部)『創造都市』をめざして新しい動きを展開する上田文雄・札幌市長と対談。など)にもかかわらず,残念ながら国レベルでも,地方自治体レベルでもその構築の動きは,「頓挫している」と言えないだろうか。一方,教育の現場では,文部科学省が,2010年5月,文部科学副大臣の主催による「コミュニケーション教育推進会議」を設置し,子どもたちのコミュニケーション能力の育成を図るための具体的な方策や普及のあり方について議論し,その審議経過報告をまとめている。そこでは「コミュニケーション能力が求められる背景」として,①社会の変化と子どもたちに求められる能力,②子どもたちの現状や課題,③新しい学習指導要領における言語活動の充実――等が述べられ,「効果的な手法・方策」が提案され,平成22年度から予算化され,実施されている。ところが,(道内の)各学校,地域の教育委員会,など「教育の現場」では,この動きに対する認識は「希薄」であり,その動きは,「鈍い」といわざるを得ない。私ども,舞台芸術プロジェクトは,その研究・実践活動の一つとして『人々が生きる気力を取り戻す場所としての劇場』,『様々な人が出会い新たなコミュニティーを生み出す場所としての劇場』の構築を目指して,研究・実践を続けているが,その実践例として2011年6月,ニセコ町・有島記念館で上演した『老船長の幻覚』について考察・報告したい。
著者
佐々木 浩子 木下 教子 高橋 光彦 志渡 晃一
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.9-16, 2013

大学生の睡眠の質と生活習慣及び精神的健康との関連を明らかにすることを目的として,北海道及び東北の大学生に「生活習慣と精神的健康状態に関する調査」を実施し,男女差及び睡眠障害の有無による比較及び検討を行った。 その結果,男子に比較して,女子では起床時刻が早く,食事の規則性などが良好で,喫煙や飲酒の習慣のある者や運動習慣のある者の割合が低いものの,ストレスの自覚の割合が高く,睡眠時間が短いなど男女の生活習慣に有意な差があることが明らかとなった。しかし,睡眠の質の評価としたPSQI-J の総得点および総得点により群分けした睡眠障害の有無の割合では男女差は認められなかった。 睡眠障害の有無による比較結果から,睡眠に関して問題をもつ者は,定期的運動習慣のある者の割合が低く,喫煙習慣のある者の割合が高く,遅い就床時刻,短い睡眠時間,長い入眠時間で,食生活に対する意識も低いなど,生活習慣においても良好な状態になく,同時に精神的な問題も抱えていることが示唆された。また,睡眠に関する問題は男女差なく,大学生の多くが共通して抱えている問題であることが明らかとなり,睡眠と生活のリズムに関する教育の必要性があるとの結論を得た。
著者
千葉 圭説
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.115-117, 2012

2011年2月に行ったチューバ・ユーフォニアムゼミ発足10周年を記念した演奏会の報告。現役学生から卒業生を含めた企画であり卒業生の中にはプロ奏者として活躍している。ソロから大編成アンサンブル演奏をプログラムした内容であり10周年にふさわしい演奏会であった。
著者
水野 信太郎
出版者
北翔大学北方圏学術情報センター
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
no.12, pp.89-100, 2020

本研究は石川啄木と妻節子(堀合セツ)夫妻と,啄木の両親(石川一禎,工藤カツ)ならびに姉妹(田村サダ,山本トラ,三浦ミツ)の年譜を,出来事ごとに出典を明らかにしながら作成しようとする試みである。啄木に関する記録としては,日記や書簡ほかの歴史的資料が数多く公刊されている。このため場所,年月日を含めて彼の動きを知ることが出来る。それらの記述を根拠として石川啄木,節子夫妻の出典付き年譜を作成する。この小さな試みによって,今後の啄木研究の新しい展開を期待する。
著者
今野 洋子 尾形 良子
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.73-76, 2014

現在,深刻化している多頭飼育崩壊に至る過程を踏まえ,初期対応実施による飼育モデルを作成した。飼育における初期対応が後の多頭飼育を回避することになる。また,多頭飼育に陥った場合,飼養者本人だけでの対応には限りがあるので,啓蒙・勧告・相談・支援等の多様な対応をチームで行う必要があることが明らかにされた。これまでに得られた知見をもとに,対応モデルを作成した。
著者
尾形 良子 今野 洋子
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.57-62, 2008

大学祭企画において実施した「猫カフェ」の効果についてのアンケート調査の分析を第1報で行った。本研究は第2報として来場者の自由記述を対象に,来場者にとって猫カフェがいかなる経験であったのかについて質的分析を行うことを目的とした。本研究においてグレーザー派のグラウンデッド・セオリー・アプローチを用いることにより,以下の諸点を明らかにすることができた。1.猫カフェは「一期一会」の経験であった。2.猫カフェにおいて人(来場者)は動物(猫)との相互作用によって満足感を得,動物とのふれあいの楽しさや効果を改めて認識していた。3.短時間の中でも,人と動物は一時的ではあるが一定の限定的な関係形成を成し遂げていたと言える。
著者
大井 敏恭 堀田 真紀子
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.23-39, 2009

製造から情報へと産業基盤が徐々に変化し,ハードよりソフトづくりが大切なことが指摘されるにつれ,日本各地で文化・芸術政策へのテコ入れが行われている。が,その多くは,文化を生み出すための土壌を生み出し,種を撒くことから始めるというより,土もないところに花(各種イベント,フェスティバルなど)だけ移植しようというような,性急さを伴っているように思われる。根付き成長するために必要な土がないところに移植された花を,不自然な状況で維持するには,膨大なエネルギーが外から注入されなければならない。その結果は資金の枯渇,関係者の疲弊となってあらわれるだろう。対して,私たちが指摘するのは,自力で文化の花を咲かせ,果実を実らせ,種が落ちて次世代が育ち持続可能に循環していけるような,土壌を私たちの社会につくる道である。つまり,地域の芸術を,草の根(ボトムアップ)の力で発信し,経済的,芸術的価値としても社会を循環し,助成金などのトップダウン的な力に依らなくても持続可能にするために,最低限,何が必要かを明らかにしたい。そのような道を模索するために,この論でとりあげたのは,地域発の現代芸術である。今述べた目的に到達するために,他にもさまざまな道がとれるだろう。その中の一つとして,あえてこの道を選んだのにはわけがある。「地域」と「現代芸術」の振興には相関関係があり,地域の固有性を豊かにするには,現代芸術が役にたち,逆に個性豊かな現代芸術を発信するために,その地域の固有性の探求が役に立つように思われるからだ。この問題をあつかうのが,Ⅰの準備考察である。その後,Ⅱ.芸術と社会の関係を分析するために,これまでなされてきた主な視点を概観し,この論考の目的を果たすために,それぞれの視点がどれだけ有効か,その可能性と限界を批判的に検討する。そのようにして必要な方法を確定した後で,Ⅲ.札幌の現状を分析し,Ⅳ.問題点を指摘し,Ⅴ.問題解決のために何ができるか,Ⅵ.それを,ここにすでにある文化的,社会的,経済的な特質に合わせた形で行うにはどうすればいいかについて述べる。本研究は共著になっている。現代芸術のおかれた状況の現状認識については,30年以上,現代芸術家として活動してきた大井が,社会の関係を分析する方法の概観や,全体の構成,最終的な執筆は堀田が主に担当した。The goal of this study is to publish local contemporary art by the power of grassroot organizations, tofind out the least necessary factors for them to be selfsustainable without the support of public funds, andlocal contemporary art to be circulated economically as well as aesthetically. Local community and localcontemporary art should reinforce and complement each other. In order to enrich originality of localcommunity, local contemporary art is useful. On the other hand, in order to publish local contemporary artand this art to be stated as original, it requires surveying uniqueness of the local community where theartists work. As a result it it establishes a correlation between art and community: the more unique thelocal community is, the deeper the local contemporary art might become.After this preliminary analysis the following points will be described:1)Checking the major idea being established until now to analyze the relationship between art and society.and2)Proving the effectiveness of application of the idea, Art Worlds by Howard S Becker, onto publishing,circulating and maintaining newly created artistic value. In other words, paying attention to thecooperation between artist, gallery, museumcurator, artcritique, researcher, artdealer, and public torecognizing, establishing and translating it to economic value.
著者
大宮司 信
出版者
北翔大学北方圏学術情報センター
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of Northern Regions Academic Information Center Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-6, 2014

日本における憑依の精神医学的研究の歴史を,宗教をひとつの要素として加え検討した。女性の教祖のばあい,日本では憑依体験をもとに宗教を始めた例が多く,苦しい生活を送った女性の心の回復のひとつの型として考えた。また人格の変性という点で共通する解離に関する精神医学研究が最近増加していることが明らかとなった。
著者
島津 彰
出版者
北翔大学北方圏学術情報センター
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.41-55, 2017

日本においてキリスト教の禁教が解かれた直後の明治期に,一農村に成立したハリスト正教会(ギリシャ正教,ロシア正教との呼称もある)の歴史を社会的な事象の中で俯瞰する。教会創立の根底には深い信仰がある事は言うまでもないが,キリスト教への理解が十分でない明治初期に,因習の残る農村地帯で教会の基盤を作り,幾多の困難を乗越えて発展を遂げ,特に日露戦争時には敵国の宗教と思われていた逆境を逆手にとって,日露戦争の俘虜への信仰慰安事業に参加し,俘虜への国際法を遵守する中で,日本の近代化の一翼を担い日本の結んだ不平等条約解消への役割を果たした正教会の活動を検証する。この検証は異なる宗教・文化に対して自国中心主義が勢いを増している世界にあって,マイノリティの立場の人々の自国の発展への寄与を顧みる時,多様性が実は豊かさを保障するものである事に気づく。同時に他宗教・他文化に属する人々が取り組んでいる事象の本質を冷静に見つめる事の大切さを示唆する。
著者
今野 洋子 尾形 良子
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of the Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-10, 2009

本研究は,大学生が関わる動物介在教育(Animal Assisted Education,以下AAEと表記する)実践として,大学祭において実施した「猫カフェ」における体験が,来場者の気分に及ぼす影響を分析することを目的とした。大学祭における猫カフェに訪れた計114名(男性30名・女性84名,平均年齢21.0±6.83歳)を対象に質問紙調査を実施し,以下の諸点を把握した。1.来場者の86.0%に動物の飼育経験(26.5%に猫の飼育経験)があり,動物に興味関心のある者が猫カフェに訪れた。2.猫カフェでの体験は,「触った」(72,8%),「見た」(65.8%)が多く,「一緒に遊んだ」(19.3%)や「抱っこした」(7.0%)は少なく,「抱っこした」者には,猫の飼育経験を持つ者が多かった。3.来場者の感想の「かわいかった」(71.1%)から猫の愛らしさ,「癒された」(63.2%),「和んだ」(60.5%)等からリラクセーション効果,「ふわふわしていた」(50.9%)「やわらかかった」(44.7%)等からのリラクセーションに結びつく触感,「楽しかった」(34.2%)「うれしかった」(30.7%)から喜びが得られた。4.猫を「触った」「抱っこした」「一緒に遊んだ」者は,直接的な触感の心地よさやリラクセーション効果が得られたが,猫を「見た」だけでも,リラクセーション効果が得られた。5.「猫カフェ」という場で初めて出会った猫に対して,来場者はリラクセーション効果を得,喜びを感じていた。6.猫カフェで過ごしたことによって,動物を飼いたいと思う者が増加した。これらの結果から,「猫カフェ」滞在型AAEは,初めて会う猫であっても,来場者の気分に影響を及ぼし,リラクセーション効果につながること,および動物飼育に対する興味関心が高まることが示された。How people feel when they visit a cat caf? Students held a cat cafdesigned for AAE (animal assistededucation) at a university festival. Participants were 114 guests (84 women and 30 men: mean age 21 years)who visited the cat cafand responded to a questionnaire. The results indicated the following. From thesample, 98 guests (86.0%) had kept a pet and 26 (26.5%) among them had kept cats. In the caf, 83 guests(72.8%) touched the cats, 75 guests (65.8%) watched the cats and 22 guests played with the cats, whereasonly 8 guests held the cats in their arms. The guests had feelings such as "cats are lovely," " felt healed bycats," " felt harmonious with cats," "cats were light," " cats were soft," "were happy with cats," and "werejoyful with cats". These feelings were indicative of relaxation. Even those who interacted with cats for thefirst time in the cat caffelt relaxed. The guests tended to want to keep pets as a result of the experienceof visiting the cat caf
著者
梶 晴美 高波 千代子
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of the Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.5-14, 2012

本稿は,フィンランドのパーソナル・アシスタンス(PA)制度の制定経緯とそれに対する当事者運動のかかわり,および2008年12月に改正されたフィンランドの障害者のためのサービス及び援助法について,新PA制度の内容,特に改正による障害者,行政,ソーシャルワーカーへの影響について,2011年1月に実施した現地での聞き取り調査をもとに検討した。1987年の障害者のためのサービス及び援助法制定時も2008年の法改正にも障害者団体の運動が強く影響していると考えられた。特に,最初の法制定時は障害者団体が単体で運動していたものが,2005年以降複数の種別の異なる障害者団体がネットワークを築いたことが,2008年の法改正,PA 制度義務化への大きな原動力になったと思われる。改正法での新PA 制度は,理念として障害者の自己決定権をより強く打ち出しているものの,実際には雇用者モデル以外では自己決定権が十分保障されているとは言い難く,雇用者としての義務と責任を果たすことが難しい人への支援策も十分ではないと思われた。国民性の違いを考慮すると一概には言えないが,雇用者の義務と責任を第三者がどのように支援すれば,雇用者モデルでPA を利用できるようになるのかを検討することに意義はあるだろう。また,新PA で課せられたサービス計画の策定は,ソーシャルワーカーがゲートキーパーとなり自治体の支出をコントロールする重要な役割を負っている反面,ワーカーにとっては非常に負荷の大きい作業であり,策定後のモニタリング不足などの課題があることが示唆された。
著者
玉木 裕
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of the Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.69-81, 2009

過去3度のOECD による「生徒の学習到達度調査」(PISA)で,日本の順位は低下し続けている。このため,従来から論じられてきた学力低下問題はもとより,「学力」そのものを問いなおす気運が生まれている。もっとも,「学力」ということばは漠然としたもので,人によりその解釈がさまざまである。果たして,PISA で問われている「学力」とは,どのようなものだろうか。本小論は,これからの社会で求められる「学力」について,特にPISA の結果をふまえ,国際比較で上位国であるフィンランドの教育思想に関連させながら考察する。そして,そこから導き出された理念を音楽科教育において適用するとともに,その姿を生涯学習の視点からとらえ直し,望ましい音楽科教育のあり方を考えようとするものである。Japan has moved down the ranking list of the Programme for International Student Assessment (PISA)conducted by OECD the last three times the assessment has been administered. For that reason, a tendencyto question "academic ability" itself has arisen, as well as problems of declining academic ability, which hasbeen argued. However, because the term "academic ability" itself is ambiguous, its interpretation differsamong observers. What is "academic ability" has become an issue for the PISA.This paper presents examination of "academic ability" required for applicability to future society, based onPISA results in particular, relating to educational thought in Finland, which has attained a high ranking incrossnational comparisons. Subsequently, we intend to apply the ideas derived from that investigation.Additionally, we examine ideal music education through reconsideration of it from the perspective of lifelonglearning.