- 著者
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高月 義照
- 出版者
- 東海大学
- 雑誌
- 東海大学紀要. 開発工学部 (ISSN:09177612)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, pp.53-75, 2011-03-31
およそ半世紀前までは,多くの人々が文学作品や映画などからいろいろな知識を吸収したものであった.ところがマンガ文化の普及とともにそうした文芸に代わってマンガが若者たちの主要な情報源になってきた.その意味で,マンガが現代の文芸に成長しているのである.文芸になったばかりでなく,マンガ文化は,今や世界各地に輸出され,多くの人たちに読まれ,またマンガから派生したコンテンツとともに「MANGA」は今や世界共通語となっている. このように,マンガが文芸へと成長し,世界に誇る日本を代表する文化の一つにまでなりえた秘密はどこにあるのか.その秘密の鍵はどこにあるのか,それを明らかにするのが本論文の目的である. その秘密を解く最大の鍵は,マンガにおける表現技法の進化にある.つまり,この半世紀の間に表現技法の上で様々な工夫が加えられ,進化を遂げてきたことによって,それまで子供の娯楽の対象でしかなかったマンガが大人の鑑賞と読書に十二分に値する文芸に成長してきたというのが私の考えである. それを論証するために,マンガの構成要素である「絵」と「文」と「記号(オノマトペ)」の3 つのそれぞれの表現技法にどのような進化があったのかを明らかにする. 「絵」については,イメージ重視の繊細な描写と精密な描写の進化があり,それに「コマ割り」の多様化によって心理描写が可能となった.また「文」についても「吹き出し」のパターン化と相俟って文字そのものによる感情表現が可能となった.さらに「記号」の多様化と多用によっていっそうダイナミックな表現が可能となったことなどが主な内容である.