著者
渡部 雅之 高松 みどり
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.111-120, 2014 (Released:2016-06-20)
参考文献数
45

空間的視点取得は,他視点への仮想的な自己身体の移動と,それ以外に必要とされる認知的情報処理の2つの過程から構成される。多くの先行研究では,これらの過程を適切に分離できておらず,使用された実験課題によって互いに矛盾する結果が得られることも多かった。特に,空間的視点取得の本質と目される仮想的身体移動がどのように発達するのかについては,今日でも十分には解明されていない。本研究では,両過程を分離して捉えるために,反応時間と視点の移動距離との間に成立する一次関数関係を利用した手法を考案した。さらに,子ども達にも容易に理解できるように,この手法を組み込んだビデオゲーム形式の課題を作成した。3–4歳群,5歳群,6歳群,13歳群,21歳群の各群20名ずつ,合計100名が課題を行った。仮想的身体移動過程もしくはそれ以外の認知的情報処理過程のみを意味する各1種類の指標と,両過程を含む従来型の反応時間と正答数との,合計4種類の指標が分析に用いられた。その結果,仮想的身体移動に関わる能力が思春期以降に発達すること,それ以外の認知的情報処理に関わる能力は児童期後期から思春期頃に大きく伸張することが示された。これらを踏まえて,仮想的身体移動の発達研究の重要性を,身体性や実行機能の観点から考察した。
著者
高松 みどり Takamatsu Midori タカマツ ミドリ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科教育学系
雑誌
大阪大学教育学年報 (ISSN:13419595)
巻号頁・発行日
no.7, pp.283-290, 2002

研究ノート修士論文では、ヘンティヒの学校理論における経験概念について思想的にアプローチした。その際明らかとなった彼の経験概念は、その学校実践にどういった影響を与えているのか。今後こういった問題を考えるにあたり、本稿では生徒の経験という行為にアプローチする方法について考える。ここで取り上げるのは、クライネスペルらによる現象学的方法、グステットナーらによる規律化論的方法、ヴルフらによる儀礼・パフォーマンス概念を中核に据えた方法である。その結果明らかとなったのは、クライネスペルらの方法も、グステットナーらの方法も、筆者の問題設定には適合しないが、おそらくヴルフらによる方法であれば適用可能であるということである。確かにヴルフらの方法はヘンティヒの「経験の余地」を閉め出しているようにも思えるが、決してそうではないと思われる。というのもヴルフの場合、生徒達が経験の中で新しい共同体を作り出すというダイナミックな儀礼概念が見られ、それはヘンティヒの経験概念にも通じると思われるのである。
著者
渡部 雅之 高松 みどり
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.111-120, 2014

空間的視点取得は,他視点への仮想的な自己身体の移動と,それ以外に必要とされる認知的情報処理の2つの過程から構成される。多くの先行研究では,これらの過程を適切に分離できておらず,使用された実験課題によって互いに矛盾する結果が得られることも多かった。特に,空間的視点取得の本質と目される仮想的身体移動がどのように発達するのかについては,今日でも十分には解明されていない。本研究では,両過程を分離して捉えるために,反応時間と視点の移動距離との間に成立する一次関数関係を利用した手法を考案した。さらに,子ども達にも容易に理解できるように,この手法を組み込んだビデオゲーム形式の課題を作成した。3–4歳群,5歳群,6歳群,13歳群,21歳群の各群20名ずつ,合計100名が課題を行った。仮想的身体移動過程もしくはそれ以外の認知的情報処理過程のみを意味する各1種類の指標と,両過程を含む従来型の反応時間と正答数との,合計4種類の指標が分析に用いられた。その結果,仮想的身体移動に関わる能力が思春期以降に発達すること,それ以外の認知的情報処理に関わる能力は児童期後期から思春期頃に大きく伸張することが示された。これらを踏まえて,仮想的身体移動の発達研究の重要性を,身体性や実行機能の観点から考察した。