著者
高松 美紀
出版者
全国大学国語教育学会
雑誌
国語科教育 (ISSN:02870479)
巻号頁・発行日
vol.83, pp.42-50, 2019-03-30 (Released:2018-04-27)
参考文献数
19

本稿は、「伝統的な言語文化」を相対化することの意義と、そのリテラシーの育成にTOKの援用が有効であることを、世界俳句(HAIKU)の授業実践によって検証したものである。学習者は、「HAIKUは『俳句』といえるか」を中心に、「なぜそう言えるか」「どの程度翻訳は可能か」等TOKを意識した問いの検討を通して認識を変化させた。当初は「日本固有の文化」として形式的条件からHAIKUを「俳句」ではないと主張していたが、機能的意義の気づきを得てHAIKUへの理解を深め、外国の俳人への敬意が生まれた。これは同時に、自文化の価値の再発見となっている。こうした自文化を絶対視する態度を保留し、多角的に自文化の独自性と普遍性を吟味して判断することは、「伝統的な言語文化」を相対化して捉えるリテラシーの獲得といえ、主体的に「伝統的な言語文化」を継承する役割を担うことにつながる。TOKを意識した問いは、学習者に前提を自覚させ、知識をメタ的に吟味し、主体的に判断する姿勢を促したといえる。