著者
高林 宏輔
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.111-115, 2022 (Released:2022-10-31)
参考文献数
19

眼窩吹き抜け骨折の治療は,初療医から治療医への紹介,受傷から手術までの期間,手術アプローチ法と複数の最適化すべき段階が存在する。初療医は実際に手術を行わないが,治療医への紹介の段階,さらには受傷から手術までの期間に関わることとなり,治療医は手術の時期や手術アプローチ法を決定する。特に緊急手術を要する病態では時間的要素が重要であり,初療医から治療医への速やかな紹介が後遺障害の残存のリスクを減じる。各段階いずれが最適化されても,眼窩吹き抜け骨折の治療成績は向上しうる。本総説では最適な診療連携,最適な手術時期,手術アプローチ法について共有し,眼窩吹き抜け骨折診療を最適化したい。
著者
高林 宏輔 片岡 信也 長峯 正泰 藤田 豪紀
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.286-291, 2021-10-15 (Released:2022-10-15)
参考文献数
16

涙嚢鼻腔吻合術を成功させるためには, 十分な骨削開, 正確な涙嚢と周囲解剖の把握, 組織の癒着の予防, 吻合口の安定が重要である。 内視鏡下涙嚢鼻腔吻合術は鼻内の解剖の把握に優れ, 涙嚢粘膜弁や鼻粘膜弁の工夫に加え, 十分な骨削開を行うことで成功率を高めてきた。 しかし, 鼻内での粘膜弁同士の縫合固定は高度な技術を要するため, 施行されないことが多い。 今回われわれは3症例に鼻腔内から鼻腔外に糸を貫通させ, 鼻外で糸を結紮することで涙嚢粘膜と鼻腔粘膜を縫合固定する工夫を行った。 鼻腔内単独での縫合は狭い空間の中で針を回転させる必要があるが, 鼻腔と鼻外を貫通させる縫合法では直線的に針を刺入するだけで粘膜弁の縫合固定が可能であった。 いずれの症例も術後経過は良好で, 手術合併症や再発の所見は認めなかった。 本術式の工夫を報告する。
著者
高林 宏輔 片岡 信也
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.159-166, 2023 (Released:2023-04-21)
参考文献数
23

外傷性視神経症は頭部顔面外傷に合併して起こりうるまれな疾患である。外科的治療として視神経管開放術が,保存的治療としてステロイド投与が施行されるが,定まった治療法はない。それゆえ症例ごとに治療の選択や導入のタイミングを判断していくことが大切である。今回われわれは受傷時に意識障害を伴う外傷性視神経症例について報告する。症例は36歳,男性。交通事故により受傷して当院に救急搬送された。意識障害を認め,視力は光覚弁であった。Computed tomography(CT)では右視神経管に骨折の所見を認め,外傷性視神経症と診断された。即日ステロイドパルス療法を開始しつつ意識障害の改善を待つこととした。意識障害は改善し,入院4日目には視力も改善傾向であったが,右視神経管骨折のためと思われる右眼の視野障害を認めたため5日目に内視鏡下視神経管開放術を施行した。術後から再度ステロイドパルス療法を施行し,14日目に退院となった。術後3ヶ月での視野検査では視野障害は改善し,視力は0.1まで改善した。CTで骨折を認める外傷性視神経症であったが意識障害のために手術を遅らせることとなった。受傷後5日目の手術であったが視機能は改善した。意識障害を伴う外傷性視神経症では,ステロイドパルス療法を先行させつつ意識障害の回復を待ってから外科的治療を導入することは有効と考えられた。