著者
高橋 利禎 小林 敏彦
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.839-844, 1988
被引用文献数
1

いろいろの条件の下に調製されたポリビニルステアラート (PVS) の構造を透過電子顕微鏡法で研究した. 次のような結果が得られた. (1) 0.3%の高分子を含むクロロホルム溶液より水面または炭素膜上に室温でキャストして薄膜を作成した. 水面上では直径約nmの微粒子よりなる不定形な構造が形成されたが炭素膜上ではフィブリル状の構造が形成された. 電子線回折法 (ED) による研究により, PVSの側鎖は親水性の基盤 (水) 上には垂直に, また疎水性の基盤 (炭素) 上には平行に配列していると推定された. (2) PVSを疎水性基とともに極性基を持つ溶剤 (オクタノール, ニトロベンゼン, シクロヘキサノール, ベンジルアルコールなど) に60℃で溶解させ. その溶液を冷却して形成されるPVSの構造を検討した. PVSは球殻, しわのある円盤, 花弁のような結晶を形成したが. それらは側鎖がその表面に対し垂直に六方充てんした球殻状構造に由来するものと考えた.
著者
桜井 謙資 小林 京子 高橋 利禎
出版者
繊維学会
雑誌
繊維学会誌 (ISSN:00379875)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.22-26, 1989-01-10 (Released:2008-11-28)
参考文献数
8
被引用文献数
4

脱アセチル化度の異なるキトサン膜を酢酸水溶液からキャスト法で調製した。塩化カリウムに対する膜電位からTeorell-Meyer-Sievers理論によって求めた膜の有効固定電荷密度および水和度は,予想に反して脱アセチル化度の増加とともに減少した。この挙動は非晶部の体積分率の低下により解離可能なアミノ基の数が減るためと推測された。同じキトサン膜で4種の単純無機塩についての透過係数を測定した。低い塩濃度においては透過速度はDonnan効果によって制限され,塩濃度とともに増加するが,高濃度においてはイオンの水和半径のみに依存する一定値となり,水和半径が大きいほど拡散係数は小さくなった。微多孔膜の透過速度は緻密な膜よりも数倍大きいが,その塩濃度依存性は類似していた。