著者
李 尚 高橋 宣明 武部 幹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.27-36, 1993-01-25
被引用文献数
28 9

本論文は雑音に埋もれた単一正弦波の検出を目的とする確率こう配法を用いたIIR形適応帯域通過/阻止ディジタルフィルタの収束速度を高くし,かつ収束後のフィルタ特性を安定化させる新しい方法について述べる.まず,IIR形適応帯域通過フィルタの収束速度とフィルタの選択度Qとの関係を解析し,その結果に基づいて,フィルタの中心周波数f_0と検出目標の正弦波周波数fとの距離に逆比例するように,フィルタのQと適応制御信号発生回路のQを連続可変することにより,f_0のfへの収束速度を速め,かつ分解能を高くできるアルゴリズムを見出した.次に適応制御信号発生回路の振幅特性の最大値を適応的にsin2πfに比例する値に制限すれば収束後の係数変動を効果的に抑制できることを見出した.このようにするとQの高いIIR形適応フィルタを容易に実現できる.また,上記に加えフィルタ係数補正のステップサイズをフィルタのQと連動させて連続可変する更に高速かつ高安定の適応アルゴリズムを提案する.IIR形適応帯域阻止フィルタの構成も与える.最後に,提案した適応アルゴリズムの有用性を計算機シミュレーションで確認する.