- 著者
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横田 恭子
竹森 利忠
大西 和夫
高橋 宣聖
大島 正道
藤猪 英樹
高須賀 直美
- 出版者
- 国立感染症研究所
- 雑誌
- 特定領域研究
- 巻号頁・発行日
- 2005
目的:本研究では、SARS-CoVに対する有効なワクチン開発のための基礎的研究を行うことを目的とする。成果:ヒトに即時に応用することが可能なワクチンとして、マウスモデルにおいてUV照射不活化ウイルス粒子ワクチンを皮下に2回接種し、これにより誘導される免疫応答を解析した。その結果、中和活性のあるIgG抗体がUV照射不活化ウイルス粒子のみで誘導可能であり、しかも長期に存続すること、アラムアジュバントを使うことにより抗体価は更に10倍以上高まることを明らかにした。安全性を更に高めるためにUV照射にホルマリン処理を加え、UV照射のみの不活化ウイルス粒子により誘導される免疫応答との比較を行った。ホルマリン処理したUV照射不活化ウイルス粒子免疫群と未処理のUV照射不活化ウイルス粒子免疫群とで血中のSARS-CoVに対するIgG抗体価を比較すると、ホルマリン処理をすることにより血中抗体価が多少低下する傾向はあるものの、中和活性のある抗体の誘導は十分可能であった。これらのマウス骨髄中のSARS-CoVのNucleocapsidに対する抗体産生細胞数は両群ともに増加しており、その数に有意差は認められなかった。また、ワクチン接種部位の所属リンパ節(腋下)のT細胞はウイルス粒子抗原に反応していくつかのTh1/Th2タイプのサイトカインを産生するが、ホルマリン処理群では非処理群と比較してIFN-の産生量がやや高く、IL-5産生量はむしろ低い傾向にあった。一方、投与部位に関しては、石井孝司博士(感染研ウイルス2部)が開発したSARS抗原を発現する弱毒ワクシニアウイルス(DIs)ワクチンを用いて皮下接種と経鼻接種における感染防御効果を比較した。経鼻免疫で誘導される鼻腔粘膜IgA抗体は皮下免疫ではほとんど誘導されないにもかかわらず、高濃度の血中IgG抗体に依存してSARS-CoVの呼吸器感染に対する防御効果が認められた。従ってUVとホルマリンで不活化したウイルス粒子によるワクチンは、即座にヒトに応用可能な安全性の高いSARSワクチンとしてのみならず、今後の新興感染症への緊急対策として有効であることが示された。