著者
横田 恭子 古川 恵一
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.27-30, 2012-01-20 (Released:2013-01-15)
参考文献数
13
被引用文献数
2

A 47-year-old Chinese woman with no significant medical history admitted for sudden-onset seizures and transient right homonymous hemianopsia had moved from China to Japan 4 years previously. Contrast brain computed tomography (CT) showed multiple calcified nodular lesions with surrounding edema, one in the left parietal lobe being likely responsible for her visual symptoms. After admission, two painful intramuscular nodular lesions were found in her left lower limb. Histopathologically biopsy specimens from these lesions were not diagnostic. Serum antibody testing (ELISA) for Taenia solium, however, was positive, yielding a diagnosis of (neuro) cysticercosis. The woman responded well to albendazole and prednisolone treatment. In the two years since discharge, she has not developed any new symptoms or seizure recurrence. With increasing global travel, clinicians must thus consider the possibility of neurocysticercosis in cases of nodular brain lesions in subjects from areas where Taenia solium remains endemic.
著者
片桐 利真 横田 恭子
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.49-52, 2021-02-15 (Released:2021-02-16)
参考文献数
16

東京都の2020 年夏のCOVID-19 の感染拡大・収束傾向と日照時間および日平均湿度との相関を調べた.東京都の発表した新たな感染者の14 日間の移動平均(An:n は日数)を基に,感染拡大・収束傾向の指標(Bn)をBn =(An-2 -An)/ An と定義した.この指標Bn は,日照時間の14 日間の移動平均(Cn)および1 日の平均湿度の14 日間の移動平均(Dn)とよく相関していた.相関係数はそれぞれ-0.74 と 0.75 であった.この結果は,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の最外殻エンベロープの化学構造やその感染メカニズムと矛盾しない.新型コロナウイルスを含む飛沫あるいは付着飛沫を乾燥させることによりウイルスの感染能力を消滅させ,飛沫感染や接触感染を防ぐためには,公共性の高い屋内あるいは人の多い屋内空間においては,加湿よりも換気を行ない,空間を乾燥した状態に保つべきである.
著者
横田 恭子 竹森 利忠 大西 和夫 高橋 宣聖 大島 正道 藤猪 英樹 高須賀 直美
出版者
国立感染症研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

目的:本研究では、SARS-CoVに対する有効なワクチン開発のための基礎的研究を行うことを目的とする。成果:ヒトに即時に応用することが可能なワクチンとして、マウスモデルにおいてUV照射不活化ウイルス粒子ワクチンを皮下に2回接種し、これにより誘導される免疫応答を解析した。その結果、中和活性のあるIgG抗体がUV照射不活化ウイルス粒子のみで誘導可能であり、しかも長期に存続すること、アラムアジュバントを使うことにより抗体価は更に10倍以上高まることを明らかにした。安全性を更に高めるためにUV照射にホルマリン処理を加え、UV照射のみの不活化ウイルス粒子により誘導される免疫応答との比較を行った。ホルマリン処理したUV照射不活化ウイルス粒子免疫群と未処理のUV照射不活化ウイルス粒子免疫群とで血中のSARS-CoVに対するIgG抗体価を比較すると、ホルマリン処理をすることにより血中抗体価が多少低下する傾向はあるものの、中和活性のある抗体の誘導は十分可能であった。これらのマウス骨髄中のSARS-CoVのNucleocapsidに対する抗体産生細胞数は両群ともに増加しており、その数に有意差は認められなかった。また、ワクチン接種部位の所属リンパ節(腋下)のT細胞はウイルス粒子抗原に反応していくつかのTh1/Th2タイプのサイトカインを産生するが、ホルマリン処理群では非処理群と比較してIFN-の産生量がやや高く、IL-5産生量はむしろ低い傾向にあった。一方、投与部位に関しては、石井孝司博士(感染研ウイルス2部)が開発したSARS抗原を発現する弱毒ワクシニアウイルス(DIs)ワクチンを用いて皮下接種と経鼻接種における感染防御効果を比較した。経鼻免疫で誘導される鼻腔粘膜IgA抗体は皮下免疫ではほとんど誘導されないにもかかわらず、高濃度の血中IgG抗体に依存してSARS-CoVの呼吸器感染に対する防御効果が認められた。従ってUVとホルマリンで不活化したウイルス粒子によるワクチンは、即座にヒトに応用可能な安全性の高いSARSワクチンとしてのみならず、今後の新興感染症への緊急対策として有効であることが示された。
著者
横田 恭子
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

HIV-1 Nefのエイズ病態における役割を明らかにするため、Nef発現で抑制されたTLR5とIL-10受容体(ベータ鎖)に注目し、これらの分子を介するマクロファージの自然免疫応答について解析した。TLR5やIL-10受容体からのシグナルはマクロファージのサイトカイン産生バランスに影響しており、Nefが自然免疫監視機能を障害する可能性が示唆された。一方、ヒト造血幹細胞移入免疫不全マウスはHIVに感染するもののマクロファージの分化発達が不十分であり、病態解析のモデルには適さなかった。
著者
明石(長谷川) 愛子 高橋 義秋 森本 みずき 横田 恭子 森本 展年
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.15-20, 2023 (Released:2023-01-28)
参考文献数
23

症例は52歳男性.突然の異常行動と意識障害で救急搬送された.搬送直後から全身痙攣をきたし,ミダゾラムにて痙攣は停止するも健忘症状が遷延した.髄膜刺激徴候を認め,臨床経過と合わせ辺縁系脳炎と考えた.血清・髄液梅毒反応陽性の結果より脳炎の原因を神経梅毒と判断し,ペニシリンGで治療を開始した.頭部MRIでは両側側頭葉内側に左側優位のT2/FLAIR高信号病変を認め,ヘルペス脳炎の可能性も考慮し,髄液HSV-DNA陰性が判明するまでアシクロビルを併用し,ステロイドパルス療法も行った.経過とともに症状は改善し職場復帰した.辺縁系脳炎で発症する神経梅毒は稀だが治療方針を考える上で極めて重要な疾患である.
著者
片桐 利真 横田 恭子
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.49-52, 2021

<p>東京都の2020 年夏のCOVID-19 の感染拡大・収束傾向と日照時間および日平均湿度との相関を調べた.東京都の発表した新たな感染者の14 日間の移動平均(An:n は日数)を基に,感染拡大・収束傾向の指標(Bn)をBn =(An-2 -An)/ An と定義した.この指標Bn は,日照時間の14 日間の移動平均(Cn)および1 日の平均湿度の14 日間の移動平均(Dn)とよく相関していた.相関係数はそれぞれ-0.74 と 0.75 であった.この結果は,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の最外殻エンベロープの化学構造やその感染メカニズムと矛盾しない.新型コロナウイルスを含む飛沫あるいは付着飛沫を乾燥させることによりウイルスの感染能力を消滅させ,飛沫感染や接触感染を防ぐためには,公共性の高い屋内あるいは人の多い屋内空間においては,加湿よりも換気を行ない,空間を乾燥した状態に保つべきである.</p>
著者
寺原 和孝 横田 恭子 岩渕 龍太郎
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究はHIV-1感染伝播における樹状細胞の役割についてヒト化マウスモデルで明らかにすることを目的とした。ヒト化マウスは樹状細胞等の骨髄系細胞の分化が乏しいため、まず、ヒト由来サイトカインであるGM-CSFおよびFlt3-Lの導入による樹状細胞の分化誘導について検討したところ、骨髄系樹状細胞亜集団であるBDCA-1+ MDC1およびBDCA-3+ MDC2の顕著な分化誘導が可能となった。そして、これらヒト化マウスにHIV-1を感染させた結果、感染前の単球数と感染後1週目の血中ウイルス量が有意に相関した。つまり、HIV-1初期感染において樹状細胞がその伝播効率に関与することが推察された。