著者
高橋 正平
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は17世紀英国におけるピューリタン説教家による火薬陰謀事件説教である。火薬陰謀事件は1605年11月5日国会開会中にカトリック教の過激派ジェズイットによるジェームズ一世暗殺未遂事件である。従来火薬陰謀事件説教は英国国教会派の説教家によって事件後毎年11月5日に行われていた。英国国教会派説教家による火薬陰謀事件説教については科研費による研究として行ったがその研究過程で私はピューリタン説教家も火薬陰謀事件説教を行っていることを知った。1640年代にピューリタン説教家も11月5日に記念説教を行うことになった。しかし、ピューリタン説教家は英国国教会派説教家とは著しい違いを見せる。英国国教会派説教はジェームズ一世体制擁護のために王賞賛、カトリック教批判に集中する。これに対してピューリタン説教家は新しい社会建設が彼らの目的であるためジェームズ一世及び息子チャールズ一世を批判する。彼らにはもはや王賞賛、体制維持の姿勢は見られない。彼らにとって時の王チャールズ一世打倒による共和国樹立が急務となるが父ジェームズ一世を賞賛することはない。ピューリタン説教家の事件日における説教は事件よりもチャールズ一世体制打破を直接論ずるのである。たとえば彼らは王党派との各地での戦いでの勝利を聴衆に確約し、また勝利をおさめればその記念に戦勝記念説教をも行う。本研究では英国国教会派説教家 William Barlowe, Lancelot Andrewes, John Donne等から始め、その後ピューリタン説教家による説教へと転じ、 Cornerius Burges,John Strickland,William Spurstowe, Mathew Newcomen等の火薬陰謀事件説教を論ずることによって両派の相違、ピューリタン説教家による火薬陰謀事件説教の真の目的の解明にあたった。