著者
梅原 広明 高橋 正昭 大坪 俊通 久保岡 俊宏
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.27-34, 2004 (Released:2004-06-22)
参考文献数
13

衛星通信等の発展にともない,静止衛星の数や利用度は増え続けている.静止軌道上で安全な運用を行うには,静止軌道のみならずその付近を運動する多数の衛星や漂流物体の軌道を正確に把握することが不可欠である.光学観測は,人工衛星からの受信電波を観測する方法より,周波数の不明な衛星,さらに周波数を発しない物体をも検出することができる長所を備えている.そのため,日本を含めた様々な国で光学観測施設が建設され観測が始められている.しかし,たとえ観測施設を増やしたところで観測領域は広大である.したがって,広域的・体系的・効率的な観測方法の構築が必要不可欠となっている.本論では,観測地から見える静止軌道を覆うように撮像領域を重ねるスキャン観測を基本にして,検出した多数の物体軌道を効率的に決定することができる観測手順を既定した.まず,静止軌道上の二点を交互に見続けるようなスキャンを二晩かけて行う.これによって,検出された物体それぞれの離心率ベクトル以外の軌道要素が概算される.軌道傾斜角がスキャンの視野角より大きな物体に対しては,追跡観測が必要ではあるが,既に他の軌道要素がほぼ正確に求められているため,各物体に対する追跡観測を単純・迅速に行うことができる.すなわち,多数の物体の軌道要素を二晩のスキャンと一晩の追跡観測から決定することができる.しかも,南北方向の運動がスキャンの視野角より10倍以上大きな物体をも軌道決定を行うことができる.通信総合研究所鹿島宇宙通信研究センターにおける光学望遠鏡を用いて観測手順が十分に機能することを示したが,様々な性能の光学観測機器で観測することができるよう,観測手順は性能変数による文字式で表現されている.
著者
久保岡 俊宏 高橋 正昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.530, pp.5-9, 2004-12-17

小口径の望遠鏡を中心としたシステムでも静止衛星の撮像は可能なのか,さらには軌道決定に活用できる定量的なデータを取得できるのかを確かめるため,冷却CCDカメラを装着した10cm F5及び6cm F6の屈折望遠鏡を可搬型の赤道儀に搭載して静止衛星の撮像を試みた.その結果,画角内への衛星の導入精度には問題があるものの,いずれの組み合わせでも静止衛星の検出が可能であることが分かった.また,10cm望遠鏡を用いたシステムと鹿島宇宙通信研究センターにある口径35cmの据置型の望遠鏡で同時観測を行い,背景に写っている恒星の位置から各時刻における衛星の赤経・赤緯を求めた.2つのシステムから求められた赤経・赤緯の差はRMSで1/1000度程度であり,小型望遠鏡から得られたデータも静止衛星の軌道決定に十分利用可能であるものと考えられる.