著者
高橋 祥子
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.141-144, 2001-04-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

28歳,女性。化粧品による接触皮膚炎を生じ,半年後異なる化粧品を使用しても再度接触皮膚炎を生じた。接触皮膚炎の度に化粧品のパッチテストを行い,2度とも数種の化粧品において陽性を呈した。化粧品メーカーの協力で,陽性であったクリームについて成分パッチテストを施行したところ,1,3-ブチレングリコール(以下,1,3-BG)で陽性を呈した。検索した結果,パッチテストで陽性を呈していた化粧品には全て1,3-BGが含有されていた。また,自験例においては同成分の接触皮膚炎の最低惹起濃度は0.1%aq.であった。1,3-BGを含有しない化粧品の使用により皮疹の再燃はない。1,3-BGはその防腐効果と適度な保湿性により年々需要が伸びている保湿剤であり,化粧品には5~10%以上の濃度で含有されていることが多い。多種の化粧品で接触皮膚炎を起こしている可能性のある時は,稀ではあるがL3-BGによる接触皮膚炎を考える必要がある。
著者
高橋 祥子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

α-シクロデキストリンとポリエチレングリコールによる包接錯体形成について研究を行った。α-シクロデキストリンとポリエチレングリコールによる包接錯体は、環動高分子材料の前駆体であるポリロタキサンを合成するために最も広く用いられている組み合わせである。包接錯体形成時に形成される環状分子に軸高分子が貫通した構造が環動高分子材料の特異な物性をもたらすため、環動高分子材料にとって包接錯体形成はカギとなる反応といえる。しかし、包接錯体形成に伴ってα-シクロデキストリン同士は凝集を起こし、反応系が溶液から固体まで大きく変化するため、包接錯体形成反応の詳細は未解明であった。そこで、本研究では高分子鎖の片末端を基板上に固定することでポリマーブラシとし、環状分子と高分子の包接反応を2次元系において追跡することにした。主に中性子反射率測定、斜入射広角X線散乱測定、表面プラズモン共鳴測定を用いて研究を行った。中性子反射率測定から包接錯体中で高分子鎖が屈曲した構造をとっており、斜入射広角X線散乱測定からは基板に対して包接錯体結晶が配向していることがわかった。また、表面プラズモン共鳴から、形成された包接錯体量の時間変化がわかった。このように、3次元系では系のゲル化や沈殿形成により知ることが出来なかった、配向性など包接錯体の構造と包接条件との関連や、包接錯体結晶が結晶核の形成と成長の様式を示すことを明らかにすることが出来た。