著者
高橋 秀則
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.18-0053, (Released:2020-01-21)
参考文献数
7

関節リウマチなどで生じる関節痛に対する西洋医学的治療は,薬物療法や理学療法などを中心に行われることが多いが難治の症例もある.一方,東洋医学的療法の一つである経穴刺激療法(遠絡療法)は,難治性疼痛に対して有力であるとの報告があるものの,有効性が確立されていない.今回,関節リウマチと診断されていた症例で,外傷を契機に発症した重度肘関節痛に対して本法が奏効したので報告する.症例は60歳,女性.左肘を捻り左肘痛が発症し,近医で肘内側靱帯断裂と診断され鎮痛薬投薬,理学療法を行うも改善せず痛みのために関節運動が困難になった.翌年には右肘関節にも痛みが生じ,次第に関節運動が困難となり,発症2年後われわれの施設に紹介受診となった.初診時両肘の関節運動はまったく不可能で,運動時痛のみならず安静時痛も激しく筋萎縮や骨萎縮も生じていた.薬物療法とともに遠絡療法が開始された.治療は1~2週間に1回行われ,2カ月後には安静時痛は消失,左肘関節は全可動域,右肘関節は0~90°までに可動域が改善した.遠絡療法は鍼を刺さない東洋医学的手技として,重度の関節痛に有力な除痛手段と思われた.
著者
高橋 秀則
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.385-392, 2011 (Released:2011-06-28)
参考文献数
7

ペインクリニックの診療に東洋医学を取り入れる傾向は近年ますます強くなっている.東洋医学的治療の中で漢方薬(湯液)と鍼灸治療は2本の大きな柱であり,これらを痛み治療に応用することは古くから行われている.漢方薬の中には病名や症状に対して簡便に処方できる方剤があるが,難治の症例では東洋医学的概念を理解した上で処方しなくてはならない場面も少なくない.一方,鍼灸治療の中にも一定の知識,技術を修得すれば比較的容易に行える治療法もあるが,それらのほとんどは対症療法(標治)であり,より効果的な治療や緩和ケアなど幅広い分野での応用を目指すならば東洋医学的診断(弁証)に基づく治療(論治)は必須である.