著者
高橋 萌黄
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PC-169, 2021 (Released:2022-03-30)

本研究の目的は,第1に,SNS上で当事者が「メンヘラ」を語ることでどのように「メンヘラ」としてアイデンティティを確立しているのかを明らかにすることである。第2に,「メンヘラ」アイデンティティの在り方を明らかにすることである。第3に,多元的アイデンティティの新モデルを提案することである。動画中心のSNS上で「メンヘラカップル」がカップル間のルールを「掟」として示す動画を対象とし,会話分析を行った。「メンヘラカップル」が「掟」を紹介する過程で,「きついことを言ったら緩める」というパターンが繰り返されていることが示された。そのパターンはいくつかの手法に分類される。1つは,強圧的な言葉で「掟」を強調し,その後すぐに「周囲の理解」という視点から自分たちの行為の認められやすさを主張する手法であった。このように,当事者はSNS上で「メンヘラ」を語るとき,「変わっているけど変わりすぎないライン」を模索していた。「メンヘラ」と「普通の人」としての自己を同時に示すことで,社会からの受容を達成し,「メンヘラ」としてアイデンティティを確立していた。そこから多元的アイデンティティの新モデルの提案を目指した。