著者
上田 早智江 高田 真史 東條 かおり 櫛田 拳 髙木 豊 樋口 和彦
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.25-34, 2023-03-20 (Released:2023-03-21)
参考文献数
18

COVID-19の感染拡大により,長時間の衛生マスク(以下,マスク)の着用が必要となった。そこで,この長期間のマスク着用による皮膚性状の変化を客観的に捉えるべく,本研究では,マスク内の温湿度環境を計測するとともに,マスク内の温湿度環境の角層への影響を評価した。また,長時間のマスク着用による皮膚性状の変化の実態を調査した。その結果,マスク内は高温多湿であり,マスクを外すことで急激な温湿度の変化が起こること,くわえて,軽度な運動負荷を伴ったマスク着用では,30分という短時間でも角層の質の変化を誘発していることが明らかとなった。長期間のマスク着用の影響解析においては,マスクの内側の皮膚性状は,外側の皮膚と比して,バリア機能が低く,ターンオーバーが亢進し,敏感な状態であることが明らかとなった。さらに,遊離脂肪酸の比率が高い皮脂が存在し,広範囲にマスクとの「こすれ」が生じることで,より皮膚性状が悪化する環境が形成されていることがわかった。