著者
高畑 裕樹
出版者
北海道大学農学部農業経済学教室
雑誌
農経論叢 (ISSN:03855961)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.77-85, 2014

従来,北海道では,農業における労働力として,出面組と言われる任意集団を利用して地域内から労働力を調達してきた経緯がある。しかしながら,従来過剰人口と言われた農村労働力は,分解・過疎化・高齢化といった状況に陥りもはや過少ともいえる状況と言える。このような状況下において,地域内から労働力を調達することは困難であり,都市部における人材派遣会社から労働者を調達せざるを得ないのが現状である。しかし,人材派遣会社が供給する労働力は以下の問題点を孕んでいる。第1に,作業に習熟することが困難な点である。農作業とは,どのような労働者でも個々の農家ごとに,作物・作業内容は異なるが長期にわたり作業に従事することで習熟することができる。しかし,人材派遣会社が供給する労働力は派遣形態の特性上,日ごとに派遣される人材が変わることが一般的であり,習熟することが困難になる。第2に,労働者派遣法改正(2012年10月施行)による日雇い派遣の禁止である。農業における雇用は,基本的に農繁期のみのスポット的な短期雇用が多数をしめる。そのため,30日以内の雇用を禁止する日雇い派遣の禁止は,農家に労働者を派遣すること自体困難にする。以上2点の問題により,現在,農家に労働者を派遣する人材派遣会社は,如何にして同一農家に労働者を「固定化」して派遣するか,また,31日以上の連続派遣を行うかその対応に迫られている。