著者
高野 知承 竹原 順次 森田 学
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.613-621, 2007-10-30 (Released:2018-03-23)
参考文献数
30
被引用文献数
2

本調査の目的は,非う蝕性歯頸部欠損すなわち,Noncarious Cervical Lesion(以下NCCL)と歯磨き習慣,歯ぎしり,咬合力,咬合接触面積および平均圧力との関連を明らかにすることである.分析対象は,陸上自衛隊丘珠駐屯地医務室歯科の受診者130名(男性)とした.全歯を対象に,NCCLの有無と形態を診査した後に,面接法による歯磨きおよび歯ぎしりに関する質問調査および咬合力,咬合接触面積および平均圧力の診査を行った.その結果,NCCLを少なくとも1歯以上保有している者は,対象者130名中78名(60.0%)であった.また,NCCL歯は,対象歯3,708歯中298歯(8.0%)であった.Tooth Wear Indexによる分類では,グレード2(深さが1mm未満の欠損)の歯が最も多く,NCCL歯298歯中の208歯(69.8%)であった.また,上顎が下顎に比べ有意に高い出現頻度であり,歯種別の出現率では前歯,大臼歯,小臼歯の順に有意に多くみられた.しかし,左右差は認められなかった.ロジスティック回帰分析の結果,NCCLの保有に対して有意な変数は,年齢(OR=2.43,36歳以上),ブラッシング圧(OR=4.88,強い : 400g)および咬合接触面積(OR=5.11,23.1mm^2以上)であった.以上の結果より,NCCL歯に左右差は認められず,上顎に多く,前歯,大臼歯,小臼歯の順で多く認められた.さらにNCCLは多因子性の疾患であり,年齢,ブラッシング圧および咬合接触面積が関連していた.