著者
青山 貴則 相田 潤 竹原 順次 森田 学
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.16-24, 2008-01-30 (Released:2018-03-30)
参考文献数
49
被引用文献数
3

一般歯科医院において,修復物の生存期間とそれに関連する要因を検討することを目的とした.札幌市内の歯科医院にて,1991年1月1日から2005年3月31日の間に修復物を用いた治療を受け,その後,定期健診やその他の治療目的などで再来院した患者を対象とした.コンポジットレジン,メタルインレー,4/5冠,メタルクラウン,メタルブリッジの生存期間とそれに関連する因子をKaplan-Meier法と,Cox比例ハザードモデルを用いて検討した.総計95人,649歯の修復物について分析した結果,平均生存期間では,メタルインレーが3,804日と最も長く,次いでコンポジットレジン3,532日,4/5冠3,332日,メタルクラウン3,276日,メタルブリッジ2,557日であった.10年の生存率を推定した結果,メタルインレー67.5%,4/5冠60.5%,コンポジットレジン60.4%,メタルクラウン55.8%,メタルブリッジ31.9%であった.再治療の原因では二次う蝕によるものが多く,特にコンポジットレジン(78.2%),メタルインレー(72.4%)で著明であった.Cox比例ハザードモデルを用いて,修復物の生存期間の長さに影響している因子を検討した結果,アイヒナー分類で生存期間と有意な関連(p<0.05)がみられ,アイヒナー分類B1,B2,B3が予後不良であり,ハザード比はそれぞれ1.88 (1.16-3.05),3.18 (1.93-5.25),2.44 (1.31-4.53)であった.年齢,歯種,治療時の歯髄状態と生存期間との間に有意な関連は認められなかった.以上の結果から,メタルブリッジの生存期間が最も短く,また咬合の要因が生存期間と関連していることが示唆された.
著者
高野 知承 竹原 順次 森田 学
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.613-621, 2007-10-30 (Released:2018-03-23)
参考文献数
30
被引用文献数
2

本調査の目的は,非う蝕性歯頸部欠損すなわち,Noncarious Cervical Lesion(以下NCCL)と歯磨き習慣,歯ぎしり,咬合力,咬合接触面積および平均圧力との関連を明らかにすることである.分析対象は,陸上自衛隊丘珠駐屯地医務室歯科の受診者130名(男性)とした.全歯を対象に,NCCLの有無と形態を診査した後に,面接法による歯磨きおよび歯ぎしりに関する質問調査および咬合力,咬合接触面積および平均圧力の診査を行った.その結果,NCCLを少なくとも1歯以上保有している者は,対象者130名中78名(60.0%)であった.また,NCCL歯は,対象歯3,708歯中298歯(8.0%)であった.Tooth Wear Indexによる分類では,グレード2(深さが1mm未満の欠損)の歯が最も多く,NCCL歯298歯中の208歯(69.8%)であった.また,上顎が下顎に比べ有意に高い出現頻度であり,歯種別の出現率では前歯,大臼歯,小臼歯の順に有意に多くみられた.しかし,左右差は認められなかった.ロジスティック回帰分析の結果,NCCLの保有に対して有意な変数は,年齢(OR=2.43,36歳以上),ブラッシング圧(OR=4.88,強い : 400g)および咬合接触面積(OR=5.11,23.1mm^2以上)であった.以上の結果より,NCCL歯に左右差は認められず,上顎に多く,前歯,大臼歯,小臼歯の順で多く認められた.さらにNCCLは多因子性の疾患であり,年齢,ブラッシング圧および咬合接触面積が関連していた.
著者
葭内 朗裕 兼平 孝 栗田 啓子 竹原 順次 高橋 大郎 本多 丘人 秋野 憲一 相田 潤 森田 学
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.12-24, 2011-09-15

本研究は,北海道国民健康保険団体連合会(以下,"北海道国保連合会"と略)から提供を受けた平成19年5月のレセプトデータに基づき,北海道内の国民健康保険被保険者のうち,満70歳以上で歯科医療機関を含む医療機関を受診した者を対象に,現在歯数,欠損補綴状況,歯周病罹患状況と被保険者1人あたりの医科診療費との関連およびレセプト1件あたりの医科診療費から現在歯数と生活習慣病の罹患状況との関連について調べたものである.その結果,平均医科診療費は,1)現在歯が20歯未満の高齢者は,20歯以上の高齢者に比べ,1. 2~1. 3倍,中でも現在歯数が0~4歯の高齢者は,20歯以上の高齢者に比べ,1.4~1.6倍と有意に高いこと,2)歯の欠損部の補綴処置を受けていない高齢者は,受けている高齢者に比べ,1.1倍程度と統計学的に有意ではないがやや高い傾向にあること,3)重度の歯周病を有する高齢者は,歯周病がない,あるいは軽度の高齢者に比べ,統計学的に有意ではないが,1.1~1.3倍程度とやや高い傾向にあること,などが明らかとなった.また,生活習慣病による平均医科診療費(レセプト1件あたり)は,1)現在歯が20歯未満の高齢者は,20歯以上の高齢者に比べて1.1~1.3倍,中でも現在歯数がO~4歯の高齢者は,20歯以上の高齢者に比べて1.2~1.7倍と有意に高かった. 2)悪性腫瘍,糖尿病,高血圧性疾患,虚血性心疾患,脳血管障害では,現在歯が20歯未満の高齢者は,20歯以上の高齢者に比べるとそれぞれ1.1~1.4倍,中でも現在歯数が0~4歯の高齢者は,20歯以上の高齢者に比べ,1.4~1.7倍といずれも有意に高かった.
著者
竹原 順次 中村 公也 三宅 亮 森田 学
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.111-116, 2007-04-30
被引用文献数
1

本研究の目的は,女子中高生における口腔乾燥感の自覚頻度および口腔乾燥感に関連する要因を明らかにすることである.分析対象は,資料が整った女子中高生997名である.口腔乾燥感の自覚率において,高校生(51.6%)は中学生(37.1%)に比較し,有意に高い値を示した(p<0.01).また,ロジステイック回帰分析の結果,口腔乾燥感の自覚(ときどきおよびいつも)に対して有意な変数は,学年(OR=1.77,高校生),食事を抜く(OR=1.53,ときどきおよびいつも),ファーストフードを食べる(OR=1.55,ときどきおよびいつも),鼻づまり(OR=2.00,ときどきおよびいつも),口呼吸(OR=1.55,ときどきおよびいつも)およびストレスを感じる(OR=2.02,ときどきおよびいつも)であった.以上より,口腔乾燥感の自覚率は,女子中学生に比べ女子高校生のほうが有意に高く,食習慣,鼻づまり,口呼吸およびストレスは口腔乾燥感の自覚に関連する要因であることが示唆された.