著者
髙峯 和則 吉﨑 由美子 島田 翔吾 髙屋 総一郎 玉置 尚徳 伊藤 清 鮫島 吉廣
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.106, no.1, pp.50-57, 2011 (Released:2012-12-06)

芋焼酎の中にローズオキサイドはシス体およびトランス体が検出され,それぞれ0.8~4.6μg/Lおよび0.3~l.9μg/Lであった。ローズオキサイドの閾値は25%アルコールでは0.35μg/L,芋焼酎では14μg/Lであった。閾値での評価は「甘い」, 「華やか」, 「バラ様」であった。ローズオキサイドは一次もろみとサツマイモからは検出されなかった。モデルもろみ(pH4.2,アルコール15%)を30℃で5日間加温するとシトロネロールからローズオキサイドへ変換された。しかしネロール,ゲラニオール,リナロールおよびα-テルピネオールからは変換されなかった。シトロネロールからローズオキサイドへの変換は蒸留工程およびモデルもろみをpH3.5以下にすることで促進された。麹菌と酵母によるシトロネロールからローズオキサイドへの変換は確認されなかった。シトロネロールはゲラニオールを前駆体として酵母により変換されたが,麹は変換に関与しなかった。以上のことから,ゲラニオールから酵母の微生物的変換作用により生成したシトロネロールが発酵過程で酸触媒による化学的変換作用によりローズオキサイドに変換し, 蒸留工程で変換が促進されることが明らかになった。