著者
久留 ひろみ 玉置 尚徳 和田 浩二 伊藤 清
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.741-748, 2010 (Released:2016-02-04)
参考文献数
20

実験室(鹿児島大学)及び奄美大島でミキを調製し,並びに市販のミキを購入した。それらのミキ中の乳酸菌を16SリボゾームDNA解析により同定した。実験室で調製したミキ中の乳酸菌を30種同定したが,全てLactococcus lactis subsp. lactisと同定された。しかし,奄美大島で調製したミキ中の乳酸菌(6種を同定)は実験室由来のものとは異なり,Leuconostoc lactis(3/6), Leuconostoc citreum(2/6)及び Lactococcus lactis subsp. lactis(1/6)であった。また,市販のミキ中の乳酸菌(6種を同定)はLeuconostoc citreum(5/6)及びLeuconostoc mesenteroides(1/6)であった。これらの結果は,ミキ中の乳酸菌は原料サツマイモや環境の違いによって異なることを示しているが,詳細な調査は今後の課題である。Lactococcus lactis subsp. lactisはナイシンの生産菌として知られているが,ミキ中のLactococcus lactis subsp. lactisもナイシンを生産した。ミキ中のバクテリアには乳酸菌の他に好気性菌も存在するが,ミキ培養の後半には好気性菌(CaCO3プレート上でのハロー非形成菌)の存在はなくなり,乳酸菌3(ハロー形成菌)だけでフローラを形成した。乳酸菌のスターターを使用することにより,ミキ初期の好気性菌の存在を大幅に低減した。スターターの使用は,ミキを安定的に製造する上で重要であると判断した。
著者
吉﨑 由美子 金 顯民 奥津 果優 池永 誠 玉置 尚徳 髙峯 和則
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.3, pp.170-178, 2015 (Released:2018-04-16)
参考文献数
16
被引用文献数
3 3

本研究では韓国麹「ヌルク」を用いた焼酎商品化の可能性について検討した。10種類のヌルクの発酵能力を確認したところ,米麹と比べ全てのヌルクで発酵能が弱かった。しかし,その中でも2種のヌルクは比較的高い発酵能力を示した。ヌルクに含まれるα-アミラーゼとグルコアミラーゼは米麹とほぼ同等であり,生デンプン分解活性に関してはヌルクの方が高かった。ヌルクに含まれるデンプン質の糊化度は米麹と比較して低く,糊化度の低さがヌルクの緩やかな発酵に影響していることが強く示唆され,糊化度をもとに発酵能力の高いヌルクを選抜できる可能性が示された。ヌルクを用いて製造した米焼酎の官能評価は,米麹を利用した焼酎より酸臭と酸味がある一方で,華やかであった。さらに,一次仕込み時に焼酎酵母を添加することでヌルクを使用した米焼酎の酸臭および酸味を抑制できる可能性が示唆された。また,ヌルクに含まれる酵母の1つとしてSaccharomyces cerevisiaeを同定し焼酎製造に適した微生物をもつことが確認された。 本研究は韓国RDAとの共同研究(Project No. PJ008600)で実施された。
著者
髙峯 和則 吉﨑 由美子 島田 翔吾 髙屋 総一郎 玉置 尚徳 伊藤 清 鮫島 吉廣
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.106, no.1, pp.50-57, 2011 (Released:2012-12-06)

芋焼酎の中にローズオキサイドはシス体およびトランス体が検出され,それぞれ0.8~4.6μg/Lおよび0.3~l.9μg/Lであった。ローズオキサイドの閾値は25%アルコールでは0.35μg/L,芋焼酎では14μg/Lであった。閾値での評価は「甘い」, 「華やか」, 「バラ様」であった。ローズオキサイドは一次もろみとサツマイモからは検出されなかった。モデルもろみ(pH4.2,アルコール15%)を30℃で5日間加温するとシトロネロールからローズオキサイドへ変換された。しかしネロール,ゲラニオール,リナロールおよびα-テルピネオールからは変換されなかった。シトロネロールからローズオキサイドへの変換は蒸留工程およびモデルもろみをpH3.5以下にすることで促進された。麹菌と酵母によるシトロネロールからローズオキサイドへの変換は確認されなかった。シトロネロールはゲラニオールを前駆体として酵母により変換されたが,麹は変換に関与しなかった。以上のことから,ゲラニオールから酵母の微生物的変換作用により生成したシトロネロールが発酵過程で酸触媒による化学的変換作用によりローズオキサイドに変換し, 蒸留工程で変換が促進されることが明らかになった。
著者
奥津 果優 門岡 千尋 小城 章裕 吉﨑 由美子 二神 泰基 玉置 尚徳 髙峯 和則
出版者
一般社団法人 日本生薬学会
雑誌
生薬学雑誌 (ISSN:13499114)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.41-48, 2017-02-20 (Released:2018-08-21)
参考文献数
20

“Shinkiku” is a traditional digestive drug prepared by the fermentation of wheat and some herbs with fermentative microbes. Shinkiku is manufactured in China and Korea, and also used in Japanese Kampo medicine as a component of Hangebyakujutsutemmato. However, there are currently no quality standards for shinkiku, and thus, the quality of shinkiku has considerable variation depending on its manufacturer. Although these variations would be partially derived from the differences in fermentative microbes, there are no studies about microbial diversities or chemical constituents in commercial shinkiku. Thus, we investigated the microbial diversity and chemical constituents of 15 commercial shinkiku samples to standardize its quality. PCR-denaturing gradient gel electrophoresis of 16S rDNA and ITS1 sequences revealed that different microbes such as Lactobacillus sp. and Candida sp. were present in each shinkiku sample. On the other hand, most shinkiku samples showed amylase (12/15 samples) and lipase activities (9/15 samples) that behave as digestants. In addition, all samples commonly contained ferulic acid (>10 nmol/g), which has anti-inflammatory and anti-oxidant activities. Thus, enzyme activities and ferulic acid were suggested to be one of the candidates for use as reference standards for the quality control of shinkiku. Exceptional shinkiku samples without enzyme activities showed a baked brown color, and ferulic acid content was inversely related with the brightness color of shinkiku (R2=0.47). Therefore, it seems that color indices would be effective to predict the quality of shinkiku such as enzyme activities and ferulic acid.
著者
久留 ひろみ 吉崎(尾花) 由美子 玉置 尚徳 和田 浩二 伊藤 清
出版者
公益財団法人 日本醸造協会・日本醸造学会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.167-174, 2010 (Released:2012-02-17)
参考文献数
13

ミキの成分組成について測定を行った。その結果,仕込み後急速に流動性が増し,デンプンがマルトースに加水分解されることがわかった。本加水分解は,酵素に起因するものであるが,本酵素は生サツマイモ中に存在する,β–アミラーゼに由来するものであると推察された。また,仕込み後急速に酸度が増しさわやかな風味が形成されたが,酸の組成としては乳酸と酢酸が主成分であった。また,乳酸については,約70%がD乳酸,約30%がL乳酸であることがわかった。エタノール分については,約1週間経過した後も1%未満であったので,酒類には該当しなかった。
著者
久留 ひろみ 吉崎(尾花) 由美子 玉置 尚徳 和田 浩二 伊藤 清
出版者
公益財団法人 日本醸造協会・日本醸造学会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.3, pp.157-163, 2011 (Released:2016-06-14)
参考文献数
8

伝統的なミキは,奄美大島の自然飲料である。通常のミキは乳酸発酵が主体であり,酒類には該当しない。ミキのもろみに,焼酎酵母を仕込み初期から加えると,エタノールが生成し,酒類に該当した。しかし,発酵速度は遅く,発酵歩合も低かった。この理由として,糖化の主体が生イモ由来のβ-アミラーゼであり,生成糖のほとんどがマルトースであるためと考えられた。焼酎酵母は麦汁の発酵性が弱いために発酵が遅れると思われた。そこで,マルトースをグルコースに分解するために,焼酎麹を加えた。焼酎麹は多量のα-グルコシダーゼ等を含有するため,マルトースが効率的にグルコースに分解されると思われた。その結果,発酵が順調に推移した。糖組成の変化はHPLCで追跡したが,焼酎麹の添加により,グルコースの生成が認められた。焼酎麹の添加は,発酵歩合が向上する効果ももたらした。
著者
熊谷 英彦 玉置 尚徳 鈴木 秀之 山本 憲二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

1.(1)大腸菌γ-グルタミルトランスペプチターゼ(GGT)の転移活性を利用して、γ-グルタミル-DOPA、γ-グルタミル-リジン、γ-グルタミルグルタミンを酵素合成した。この結果、γ-グルタミル-γ-グルタミル-DOPA、α位またはε位がγ-グルタミル化されたリジン、γ-グルタミル基が3重につながったグルタミンの合成が明らかになった。(2)大腸菌GGTの低温(20℃)での高発現について、その機構の解明を試みた。その結果、低温でのmRNAの発現量が高くまた低温でmRNAの安定性が高いことが明らかになった。(3)大腸菌GGTのX線結晶構造解析を行いその主鎖構造を明らかにした。(4)大腸菌でのグルタチオン代謝においてGGT反応によってペリプラスムで生成するシステイニルグリシンは、細胞内に取り込まれそれぞれの構成アミノ酸へ分解されること、その際ペプチダーゼA、B、D、Nのいずれもが作用することを明らかにした。ペプチダーゼBについては精製しその性質を解明するとともに、遺伝子のクローニングを行った。2.(1)ビフィズス菌β-グルコシダーゼの遺伝子を大腸菌にクローニングし、大腸菌のβ-グルコシダーゼ高発現株を得た。本高発現株からβ-グルコシダーゼを結晶状に精製し、本酵素が加水分解反応の逆反応(合成反応)を触媒することを発見した。(2)本酵素の固定化カラムと活性炭カラムをタンデムにつなぎ、連続的に合成反応を行い、ゲンチオビオースとフコシル(β1-6)グルコースを合成した。このフコシルグルコースを用いて、ビフィズス菌、乳酸菌、その他種々の腸内細菌による資化性テストを行い、ビフィズス菌9種のうち8種が資化することまた他の細菌類は資化しないことを確認した。(3)ビフィズス菌のα-ガラクトシダーゼが誘導的に生合成されることを明らかにし、単離精製した。本酵素の性質を明らかにするとともに、大腸菌α-ガラクトシド資化能を利用して本酵素遺伝子のクローニング株を取得し、その高発現に成功した。