著者
馬場 重樹 髙岡 あずさ 佐々木 雅也
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.843-847, 2018 (Released:2018-08-20)
参考文献数
12

炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis: UC)やクローン病(Crohn’s disease: CD)では消化管病変の増悪により静脈栄養を選択する場合がある。潰瘍性大腸炎治療の基本は薬物治療であり、静脈栄養は腸管安静や栄養状態改善の意味合いが強い。一方、クローン病治療は薬物療法と栄養療法の二本立てを基本とし、静脈栄養にて炎症の沈静化や粘膜治癒が期待できる。ここでは潰瘍性大腸炎とクローン病における栄養障害の特徴と静脈栄養の位置づけを記載するとともに、実際のエネルギー投与量の設定方法についても概説する。また、静脈栄養が有用であったクローン病の1例を提示し、免疫統御療法全盛の炎症性腸疾患診療における静脈栄養の意義について解説を行う。
著者
髙岡 あずさ 佐々木 雅也 井上 真衣 馬場 重樹 安藤 朗
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.1320-1323, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
22

クローン病と潰瘍性大腸炎は炎症性腸疾患と称され、高率に栄養不良を認める。これにはエネルギー代謝の変化も関与しているが、十分な検討はなされておらず、一定の見解は得られていない。我々が入院時に間接熱量測定を施行した成績では、両疾患ともに健常人より安静時エネルギー消費量(REE)が有意に高かったが、両疾患に有意差はなかった。一方、疾患活動性との相関は潰瘍性大腸炎にのみ認められた。これは近年の欧米からの報告を支持する結果である。また、潰瘍性大腸炎における寛解導入前後のエネルギー代謝の変化をみると、REEは有意に低下し、呼吸商は上昇した。エネルギー代謝が変化する要因として、炎症性サイトカインとの関連について検討したところ、両疾患ともにREEとIL-6の間に正の相関が認められたが、TNF-αとの関係性は認めなかった。炎症性腸疾患では、このようなエネルギー代謝の変化に応じた栄養療法が重要である。