著者
近藤 千明 野並 葉子 森 菊子 魚里 明子
出版者
兵庫県立大学
雑誌
兵庫県立大学看護学部紀要 (ISSN:13498991)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.65-75, 2005-03-15

在宅介護者は、介護のため長時間の外出は難しく、病院や看護相談に行くことが困難な状況にある。また、生活の場で行われる在宅介護は、介護者の生活習慣に少なからず影響すると考えられる。そこで、在宅にいながらでも利用可能な看護相談システムを検討することとした。今回は、在宅介護者に、電子メールを用いた生活習慣病予防のための看護相談を行い、その利用状況と相談内容について事例毎に検討を行うこととした。対象は、訪問看護を受けている在宅介護者3名とし、看護相談の実施期間は、平成15年9月から平成16年1月の4ヶ月とした。その結果、(1)3名の電子メールの利用回数は、5回、14回、12回であり、全員が利用できたが、利用時間帯や回数は個人差があった。電子メールの初心者には、電話窓口を設置したが、利用は1回のみであった。(2)A氏は、在宅介護者の生活習慣病予防のための看護相談であったが、要介護者に関する相談のみの利用であった。(3)B氏は、最初は要介護者に関する相談であったが、研究者が食事の内容や生活を尋ねていくと、介護者自身に関する相談へと変化した。(4)C氏は、最初から介護者自身に関する相談があり、研究期間の後半では、相談以外に楽しかった出来事の報告もあった。在宅介護者への電子メールを用いた看護相談は、要介護者の健康に間する相談と在宅介護者自身の健康に関する相談の両者に対応していく必要性が示唆された。
著者
魚里 明子 伊木 智子 古川 秀敏
出版者
関西看護医療大学
雑誌
関西看護医療大学紀要 (ISSN:18835686)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.51-61, 2016-03

【目的】糖尿病罹患という長く苦しい状況の中で,糖尿病の病状が悪化する人としない人がいるのはなぜかということに着目し,健康生成論を理論背景として,2 型糖尿病患者の「健康に生き抜く力」を構成する要素は何かを明らかにする。【対象】病院・診療所で治療中の2 型糖尿病患者8 名を対象に,半構成的面接をおこなった。それぞれのインタビューの逐語録をデータとして,質的分析をおこなった。倫理的配慮として,研究協力者に,本研究の趣旨,研究協力拒否の権利,研究拒否をしても不利益を受けないこと,匿名性の確保,データの厳重管理について口頭と文書で説明し,文書によって同意を得た。また,研究者が所属する大学の研究倫理委員会の承認を得た。【結果】2 型糖尿病患者の「健康に生き抜く力」の構成要素として,「客観的に判断する力」「自己決定できる力」「調整できる力」「状況を判断する力」「ポジティブに捉える力」「支援を得る力」が抽出された。【考察】2 型糖尿病患者の「健康に生き抜く力」は,自覚症状で判断できない疾患の特徴から,自覚症状には頼らず,データから疾患の悪化を推測し,生活をコントロールしているという「客観的に判断する力」が糖尿病の悪化を防いでいることが認められた。仕事や職場環境に影響されなくなった定年退職後は,「自己決定できる力」と,食事や薬の調整を自分が考え,実行したいようにコントロールできる「調整できる力」により,病状が悪化しなくなっていた。また,合併症を起こしたことにより,今までの自分の行動を反省すると共に,自分の将来を見通し,今後のことを考え無茶はしないという「状況を判断する力」,合併症を起こした状況を悲観することなく,なんとかしようと前向きに考えるという「ポジティブに捉える力」を持っていた。また,食事療法に協力してくれる家族や糖尿病のことに関しては信頼できる専門家の支援を得られるという「支援を得る力」を持っていることも認められた。