著者
魚里 明子 伊木 智子 古川 秀敏
出版者
関西看護医療大学
雑誌
関西看護医療大学紀要 (ISSN:18835686)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.51-61, 2016-03

【目的】糖尿病罹患という長く苦しい状況の中で,糖尿病の病状が悪化する人としない人がいるのはなぜかということに着目し,健康生成論を理論背景として,2 型糖尿病患者の「健康に生き抜く力」を構成する要素は何かを明らかにする。【対象】病院・診療所で治療中の2 型糖尿病患者8 名を対象に,半構成的面接をおこなった。それぞれのインタビューの逐語録をデータとして,質的分析をおこなった。倫理的配慮として,研究協力者に,本研究の趣旨,研究協力拒否の権利,研究拒否をしても不利益を受けないこと,匿名性の確保,データの厳重管理について口頭と文書で説明し,文書によって同意を得た。また,研究者が所属する大学の研究倫理委員会の承認を得た。【結果】2 型糖尿病患者の「健康に生き抜く力」の構成要素として,「客観的に判断する力」「自己決定できる力」「調整できる力」「状況を判断する力」「ポジティブに捉える力」「支援を得る力」が抽出された。【考察】2 型糖尿病患者の「健康に生き抜く力」は,自覚症状で判断できない疾患の特徴から,自覚症状には頼らず,データから疾患の悪化を推測し,生活をコントロールしているという「客観的に判断する力」が糖尿病の悪化を防いでいることが認められた。仕事や職場環境に影響されなくなった定年退職後は,「自己決定できる力」と,食事や薬の調整を自分が考え,実行したいようにコントロールできる「調整できる力」により,病状が悪化しなくなっていた。また,合併症を起こしたことにより,今までの自分の行動を反省すると共に,自分の将来を見通し,今後のことを考え無茶はしないという「状況を判断する力」,合併症を起こした状況を悲観することなく,なんとかしようと前向きに考えるという「ポジティブに捉える力」を持っていた。また,食事療法に協力してくれる家族や糖尿病のことに関しては信頼できる専門家の支援を得られるという「支援を得る力」を持っていることも認められた。
著者
服部 直子 犀川 由紀子 山本 洋子 小平 京子
出版者
関西看護医療大学
雑誌
関西看護医療大学紀要 (ISSN:18835686)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.30-38, 2014-03

【目的】臥床患者に対する看護技術「陰部洗浄」に関して,臨床で実践している内容と看護基礎教育で教授している内容を明らかにし,陰部洗浄の方法とその教育方法を検討する。【方法】質問紙調査【対象】近畿圏200床以上の病院で陰部洗浄を実施している看護職,および西日本の私立看護系大学において陰部洗浄を教授している教員【結果】有効回答数は看護師222名,看護教員38名であった。臨床では99%が陰部洗浄で紙オムツを使用していた。実施上の困難として「股関節の可動域制限があり開脚できない患者への対処」,「自分で臀部を拳上できない患者への対処」等,患者の身体的状況に関連する内容と,使用物品に関する内容があげられた。看護系大学では,3分の2が紙オムツ,約半数が便器を使用する方法で陰部洗浄を教授し,教授上の困難として,「モデル教材を使用する限界」,「学生の性差を踏まえた教育方法」,「教育内容の迷い」等があげられた。【考察】陰部洗浄の方法については,安全で安楽な用具開発の必要性が示唆された。看護基礎教育においては,臨床の現状を踏まえた上で複数の方法で教授すること,方法のエビデンスの確立やモデル教材の改善が必要である。
著者
服部 直子 パグワ ボヤンジャルガル 奥津 文子
出版者
関西看護医療大学
雑誌
関西看護医療大学紀要 (ISSN:18835686)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.62-69, 2016-03

関西看護医療大学とモンゴル国立医科科学大学看護学部は,2011 年9 月に学術交流協定を結び,以来様々な交流事業を行ってきた。本報告ではまず,モンゴルの保健医療事情や看護教育の制度について概観した上で,モンゴル国立医科科学大学看護学部の概要と看護学科のカリキュラムについてまとめた。さらにモンゴル国立医科科学大学看護学部において実施した両大学教員の協働による基礎看護技術「手指衛生」の演習の試みを振り返った。演習実施にあたっては,計画立案の段階から日本とモンゴルの施設設備や実施されている方法の違いから,教授内容と方法について議論を重ねる必要があった。演習当日は看護学部看護学科2 年生および他学科の学生,計70 名の参加が得られ,学生は蛍光ローションを両手に擦り込み,手洗い後に手洗いチェッカーで洗い残しの癖を見る等,手指衛生技術の習得に取り組んだ。手洗いの結果を視覚的に確認できたことで,より確実な技術の習得に繋がったと考えられた。両大学のよりよい教育実践に向けて,今後さらなる連携をめざしたい。
著者
森田 智子 江川 隆子 笠岡 和子 神谷 千鶴 西村 めぐみ 原田 美穂子 服部 直子 東 美鈴 出原弥和
出版者
関西看護医療大学
雑誌
関西看護医療大学紀要 (ISSN:18835686)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.14-22, 2012-03

【目的】2010年健康ひょうご21活動(県民運動実践活動)の助成を受け、世代間交流のプログラム創設の基礎資料を得るために、老人力の発掘調査を行い現在の健康状態や地域活動参加状況などの実態を明らかにすることを目的とした。【方法】A町内会の同意が得られた65歳以上の高齢者327人に自記式質問調査を行った。【結果】有効回答者133人のうち女性60.9%、平均年齢76.1歳±7.8歳。伝承遊びのほとんどの項目は6割以上行っており、郷土料理は「いかなごの釘煮」(68.4%)、お菓子類は餅類(75.2%)、保存食は「梅干し」(88.7%)、薬草は「どくだみ」(42.9%)が多かった。生活満足度、主観的健康観は70%以上が肯定回答であり、老研式活動能力は全項目7割以上が「はい」と回答した。老人力を若い世代へ継承していきたい人は43.4%であり、地域活動で参加している人は43.0%、ボランティア活動をしてみたい人は12.3%だった。【考察】:対象者は概ね健康状態が良く、健康に気をつけている人が多かったが、若い世代への継承、地域活動への参加も4割弱だった。今後は高齢者個々のニーズを把握した世代間交流プログラムを検討していくことが課題である。