著者
鮎川 宏之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.64-69, 2021-01-01

経頭蓋超音波検査(TC-CFI)を始める前に 頭蓋内血管の病変を評価する方法の1つに経頭蓋超音波検査(transcranial color flow image:TC-CFI)がある.この超音波検査は,磁気共鳴血管撮影法(MR angiography:MRA),コンピュータ血管断層撮影(CT angiography:CTA),デジタル・サブトラクション血管造影検査(digital subtraction angiography:DSA)のように特別な設備の必要はなく,従来の超音波診断装置にて非浸襲的かつベッドサイドでも簡単に繰り返し検査が行える. 近年では頸動脈病変の診断や治療方針決定にあたって,頸動脈超音波検査の進歩は目覚ましいものがある.しかし頸動脈超音波検査は高位病変や末梢(頭蓋内)頸動脈においては観察できず,MRIやCT検査に頼らざるを得ないことがしばしば臨床ではみられる.その際,TC-CFIを用いることで,頸動脈から頭蓋内血管までより詳しい評価が可能となることがある.本稿では,筆者がレジデントから受けた3つの質問について,簡単ではあるが解説したい.
著者
中前 恵一郎 桝田 出 東 信之 岩崎 新 髭 秀樹 今井 優 戸田 勝代 藤井 嘉章 鮎川 宏之 黒瀬 聖司 武田 定子 葛谷 英嗣
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1357-1363, 2016-12-15 (Released:2017-12-15)
参考文献数
19

脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は,心血管保護作用のほかに脂肪分解促進,インスリン抵抗性改善など代謝作用を有している.SGLT2阻害薬ダパグリフロジン(DAPA)の心機能や代謝・体組成への効果に対する心臓・代謝ホルモンとしてのBNPの意義を検討した.高血圧合併2型糖尿病患者24例(血中BNP 4 pg/mL以上,平均BMI 28.0 kg/m2,平均HbA1c 7.4%)にDAPA 5 mg/日を24週間投与し,心エコー,血液検査,体組成を測定した.生理活性を有する血中BNPは増加傾向(p=0.08)を示したが,非活性の血中NT-proBNP(p<0.05),NT-proBNP/BNPモル比(p<0.01)は低下した.心エコー拡張機能指標のE/e’や左房容積係数は改善し,空腹時血糖,HbA1c,血中インスリン値,体重,内臓脂肪面積,拡張期血圧は有意に低下した.血中BNPの増加は,脂肪分解,糖代謝改善作用などのBNPの生理活性が発揮されていることを示す可能性が考えられた.DAPAは,BNPの生理活性増強と心負荷軽減作用を介して,心機能や代謝に好影響を及ぼすことが示唆された.