著者
中前 恵一郎 桝田 出 東 信之 岩崎 新 髭 秀樹 今井 優 戸田 勝代 藤井 嘉章 鮎川 宏之 黒瀬 聖司 武田 定子 葛谷 英嗣
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1357-1363, 2016-12-15 (Released:2017-12-15)
参考文献数
19

脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は,心血管保護作用のほかに脂肪分解促進,インスリン抵抗性改善など代謝作用を有している.SGLT2阻害薬ダパグリフロジン(DAPA)の心機能や代謝・体組成への効果に対する心臓・代謝ホルモンとしてのBNPの意義を検討した.高血圧合併2型糖尿病患者24例(血中BNP 4 pg/mL以上,平均BMI 28.0 kg/m2,平均HbA1c 7.4%)にDAPA 5 mg/日を24週間投与し,心エコー,血液検査,体組成を測定した.生理活性を有する血中BNPは増加傾向(p=0.08)を示したが,非活性の血中NT-proBNP(p<0.05),NT-proBNP/BNPモル比(p<0.01)は低下した.心エコー拡張機能指標のE/e’や左房容積係数は改善し,空腹時血糖,HbA1c,血中インスリン値,体重,内臓脂肪面積,拡張期血圧は有意に低下した.血中BNPの増加は,脂肪分解,糖代謝改善作用などのBNPの生理活性が発揮されていることを示す可能性が考えられた.DAPAは,BNPの生理活性増強と心負荷軽減作用を介して,心機能や代謝に好影響を及ぼすことが示唆された.
著者
黒瀬 聖司 今井 優 別府 浩毅 内藤 玲 宮本 雅子 桝田 出
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.631-635, 2010-08-30

心拍数減衰応答(HRR)を用いた糖尿病患者の運動強度設定法について検討した.対象は糖尿病教育入院患者45名である.HRRはトレッドミル運動負荷試験終了時から直後1分目の心拍数減衰値と定義し,HRR>18拍/分を正常群,≦18拍/分を低下群に分類した.また心肺運動負荷試験から嫌気性代謝閾値(AT)を測定し,Karvonen法によりATに相当するestimated-kを求めた.その結果,HRRの低下は48.9%に認めた.estimated-kは正常群0.37±0.12,低下群0.27±0.14であり有意な差を認めた(p<0.05).HRRはestimated-kとの間に正の相関関係(r=0.39,p<0.01)を認めた.またestimated-kに影響する因子の多変量解析の結果,HRRが抽出された.以上から,HRRが低い症例ではk値すなわち目標心拍数を低めに設定することが必要と考えられ,HRR低下群ではk=0.27が適当と考えられた.<br>