著者
村田 敬 伊藤 佳代子 高木 洋子 森 栄作 安藤 理子 中川内 玲子 阿部 恵 河野 茂夫 山田 和範 葛谷 英嗣
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.845-848, 2008 (Released:2009-05-20)
参考文献数
6
被引用文献数
1

症例は2型糖尿病の男性(49歳),前医にてインスリンおよびエパルレスタットの処方を受けていたが,歩行障害悪化を主訴に来院.BMI 14.9 kg/m2, 下肢優位で左右対称な軽度筋力低下,下肢優位の小脳失調症状を認めた.HbA1c 15.6%, 糖尿病網膜症なし,神経伝導速度は運動・感覚ともに低下.入院後,次第に筋力低下と歩行機能が改善.入院時の残血清中ビタミンB1濃度は0.6 μg/dlと低値.フルスルチアミン100 mg/日の点滴を行ったところ,筋力回復し,軽快退院した.管理栄養士による聞き取り調査では白米中心の偏食傾向があり,ビタミンB1の推定摂取量は0.5 mg/日と所要量(1.2 mg/日)の半分程度であった.以上のような検査結果・臨床経過から総合的に判断して,本症例の歩行障害の主因はビタミンB1欠乏症による脚気神経炎であった可能性が高いと診断した.脚気神経炎は糖尿病性多発神経障害と症状が似ており,つねに鑑別診断として念頭におく必要がある.
著者
中前 恵一郎 桝田 出 東 信之 岩崎 新 髭 秀樹 今井 優 戸田 勝代 藤井 嘉章 鮎川 宏之 黒瀬 聖司 武田 定子 葛谷 英嗣
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1357-1363, 2016-12-15 (Released:2017-12-15)
参考文献数
19

脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は,心血管保護作用のほかに脂肪分解促進,インスリン抵抗性改善など代謝作用を有している.SGLT2阻害薬ダパグリフロジン(DAPA)の心機能や代謝・体組成への効果に対する心臓・代謝ホルモンとしてのBNPの意義を検討した.高血圧合併2型糖尿病患者24例(血中BNP 4 pg/mL以上,平均BMI 28.0 kg/m2,平均HbA1c 7.4%)にDAPA 5 mg/日を24週間投与し,心エコー,血液検査,体組成を測定した.生理活性を有する血中BNPは増加傾向(p=0.08)を示したが,非活性の血中NT-proBNP(p<0.05),NT-proBNP/BNPモル比(p<0.01)は低下した.心エコー拡張機能指標のE/e’や左房容積係数は改善し,空腹時血糖,HbA1c,血中インスリン値,体重,内臓脂肪面積,拡張期血圧は有意に低下した.血中BNPの増加は,脂肪分解,糖代謝改善作用などのBNPの生理活性が発揮されていることを示す可能性が考えられた.DAPAは,BNPの生理活性増強と心負荷軽減作用を介して,心機能や代謝に好影響を及ぼすことが示唆された.