著者
鳥光 慶一 古川 由里子 河西 奈保子
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.121, no.5, pp.349-356, 2003 (Released:2003-04-26)
参考文献数
16
被引用文献数
1

刺激に伴って神経終末より放出される神経伝達物質は,神経における情報の伝達物質,すなわち情報のキャリアとして働いていることはよく知られている.特に,シナプスの可塑的変化における放出量変化は,長い間議論の対象となっている.しかしながら,最近の研究によりこれら伝達物質が本来の情報伝達だけでなく,虚血等の脳疾患や細胞死,あるいは細胞/組織の発達·生死においても重要な役割を担っていることを示すことが明らかになってきた.したがって,放出される神経伝達物質の量的変化を測定することは,神経伝達物質の機能を解明する上で極めて重要である.さらにその放出の空間的分布が測定できれば,生理的機構の解明や疾病の診断に役立つものと考える.本稿では,代表的な興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の計測について,グルタミン酸酸化酵素/西洋わさびペルオキシダーゼによる酵素反応と電極による電気化学測定法,およびこれを64チャンネルのITOプレナー電極アレイに適用したマルチアレイセンサーについての基本原理を説明するとともに,これらの方法を用いて測定したラット培養大脳皮質細胞からのカルシウム依存性グルタミン酸放出,および海馬スライスにおける刺激応答性グルタミン酸放出の空間分布計測についての測定例を紹介する.マルチアレイセンサーは,多点のグルタミン酸放出変化をリアルタイムで計測可能であり,各部位における薬液応答の相違をイメージ化するなど様々な方面への発展性が期待できる.
著者
住友 弘二 鳥光 慶一 樫村 吉晃
出版者
日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

シリコン基板上の微小井戸アレイを脂質二分子膜でシールすることで,膜タンパク質の機能する場を構築した.微小井戸内にイオン濃度に反応する蛍光色素を封入することで,脂質二分子膜に導入したイオンチャネルの機能計測を可能にした.微小井戸の容量を非常に小さくすることで,高感度な検出を実現した.微小井戸をシールする脂質二分子膜は,内外の浸透圧差など機械刺激に非常に敏感に反応することが分かった.高感度なメカノセンサーの可能性を示した.また,実際の神経細胞の成長制御を通して,ナノバイオデバイスと精細胞の連携の可能性も示した.