著者
鳥居 久展 貴志 真也 吉川 則人 和田 哲宏 吉田 隆紀 小川 成敏 北村 有己子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.C0325-C0325, 2005

【目的】夏季のスポーツ活動における熱中症の問題は以前より指摘されている。なかでも熱痙攣は発生頻度が高く、一般的にも「筋肉がつる」といった表現で知られている。われわれは1998年から和歌山県高校野球連盟からの要請により全国高校野球選手権和歌山大会のメディカルサポートを和歌山県理学療法士協会協力のもと実施してきたが、試合中の熱痙攣の対処には苦難する場面が多いのが現状である。今回、過去のサポート中における熱痙攣の発生状況について調査し、現場での高校球児の熱痙攣の特徴や要因、今後の課題についての知見を得たので報告する。<BR>【方法】全国高校野球選手権和歌山大会における熱痙攣の発生率、発生時期、発生部位、ポジション別発生状況、試合復帰状況を過去5年間(2000~2004年)のサポートカルテより調査した。<BR>【結果】熱痙攣の発生率は、サポート総処置件数335件中24件と全体の7%であった。しかしその割合は増加傾向にあり2004年では全体の18%と高くなった。発生時期としては21件(88%)が試合後半の6回以降に発生しており、守備中11件、投球中7件、走塁中6件の順に多かった。発生部位は下腿13件(両側4、片側9)、両下肢全体4件、ハムストリングス3件(両側2、片側1)、片側下腿+ハムストリングス2件、全身性2件であった。ポジション別にみると投手8例、捕手1例、内野手8例、外野手7例で全員先発メンバーであった。投手は8例中7例が投球中に軸足側の下腿に発生しておりポジション特性がみられた。処置後、試合復帰可能だった例は16例(うち2例が試合中再発、1例が続行不可能)で、8例が試合復帰不可能となった。処置としては水分補給、アイシング、ストレッチ等の応急処置の他、イニング毎に状況確認を行い必要な処置を実施した。<BR>【考察】高校球児にとって夏の地方大会は甲子園に直結する重要な大会であり、その独特の緊張感と暑熱環境下での開催の為、選手の身体的・精神的疲労は大きいと考えられる。2004年度に発生率が高くなったのは大会中の最高気温が平均33°Cを超えるなど(2003年は同29°C)、環境要因が大きいと考える。ポジション別では投手の割合が高く、発生時期が試合後半、部位は下肢に集中しており、運動量、疲労との関係が大きいと考える。復帰状況では3人に1人が復帰不可能となっており、両下肢や全身性の痙攣を起こしていた為、回復に時間を要したことが原因である。試合中は自由飲水させているチームが多いが、自由飲水の場合必要量の60~70%程度しか摂取できていないともいわれ、今後はチームレベルでイニング毎の水分補給やミネラル分の補給を促す必要がある。それには各選手、チームの熱中症に対する知識を高めるとともに大会レベルでの取り組みが必要となるため、今後一層サポート側からの啓発活動を行っていく予定である。
著者
鳥居 久展 貴志 真也 吉川 則人 和田 哲宏 吉田 隆紀 小川 成敏 北村 有己子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0325, 2005 (Released:2005-04-27)

【目的】夏季のスポーツ活動における熱中症の問題は以前より指摘されている。なかでも熱痙攣は発生頻度が高く、一般的にも「筋肉がつる」といった表現で知られている。われわれは1998年から和歌山県高校野球連盟からの要請により全国高校野球選手権和歌山大会のメディカルサポートを和歌山県理学療法士協会協力のもと実施してきたが、試合中の熱痙攣の対処には苦難する場面が多いのが現状である。今回、過去のサポート中における熱痙攣の発生状況について調査し、現場での高校球児の熱痙攣の特徴や要因、今後の課題についての知見を得たので報告する。【方法】全国高校野球選手権和歌山大会における熱痙攣の発生率、発生時期、発生部位、ポジション別発生状況、試合復帰状況を過去5年間(2000~2004年)のサポートカルテより調査した。【結果】熱痙攣の発生率は、サポート総処置件数335件中24件と全体の7%であった。しかしその割合は増加傾向にあり2004年では全体の18%と高くなった。発生時期としては21件(88%)が試合後半の6回以降に発生しており、守備中11件、投球中7件、走塁中6件の順に多かった。発生部位は下腿13件(両側4、片側9)、両下肢全体4件、ハムストリングス3件(両側2、片側1)、片側下腿+ハムストリングス2件、全身性2件であった。ポジション別にみると投手8例、捕手1例、内野手8例、外野手7例で全員先発メンバーであった。投手は8例中7例が投球中に軸足側の下腿に発生しておりポジション特性がみられた。処置後、試合復帰可能だった例は16例(うち2例が試合中再発、1例が続行不可能)で、8例が試合復帰不可能となった。処置としては水分補給、アイシング、ストレッチ等の応急処置の他、イニング毎に状況確認を行い必要な処置を実施した。【考察】高校球児にとって夏の地方大会は甲子園に直結する重要な大会であり、その独特の緊張感と暑熱環境下での開催の為、選手の身体的・精神的疲労は大きいと考えられる。2004年度に発生率が高くなったのは大会中の最高気温が平均33°Cを超えるなど(2003年は同29°C)、環境要因が大きいと考える。ポジション別では投手の割合が高く、発生時期が試合後半、部位は下肢に集中しており、運動量、疲労との関係が大きいと考える。復帰状況では3人に1人が復帰不可能となっており、両下肢や全身性の痙攣を起こしていた為、回復に時間を要したことが原因である。試合中は自由飲水させているチームが多いが、自由飲水の場合必要量の60~70%程度しか摂取できていないともいわれ、今後はチームレベルでイニング毎の水分補給やミネラル分の補給を促す必要がある。それには各選手、チームの熱中症に対する知識を高めるとともに大会レベルでの取り組みが必要となるため、今後一層サポート側からの啓発活動を行っていく予定である。
著者
貴志 真也 鳥居 久展 畑山 大輔
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CbPI1291-CbPI1291, 2011

【目的】<BR> アキレス腱断裂後3ヶ月で剣道競技に復帰した女子高校剣道選手の症例を経験した。そこで今回、早期競技復帰に向けて当院で開発したアキレス腱断裂縫合術後の剣道用装具とアキレス腱縫合術後のリハビリテーションプログラムを紹介し、今後の課題について検討する。<BR>【方法】<BR> 1)手術内容とリハビリテーションプログラムの紹介と検討:術後術式はTriple-Tsuge法+cross-stitch法で、リハビリテーションプログラムは、術後3日目:短下肢装具装着にて歩行開始(状態に合わせて部分荷重から全荷重)、患部外トレーニング、足関節背屈自動運動、足関節底屈以外の足関節筋力トレーニング(isometric)開始。術後2週間目:足関節底屈以外の足関節筋力トレーニング(isotonic)、タオルギャザー、足関節底屈自動運動、術後3週目:足関節底屈筋力トレーニング、術後4週目:エルゴメーター、術後5週目:裸足歩行、術後6週:両脚カーフレイズ、術後8週目:片脚カーフレイズ、剣道の摺り足と引き技練習。術後9~10週目:ジョギング、縄跳び、剣道の基本練習。つま先跳び20回出来ればスポーツ復帰。また、剣道の練習は当院で開発した装具を装着する。<BR>装具は両側(内側・外側)にバネ支柱と底屈誘導バンド(ゴム製)を装着している。ズレを防止するため皮膚接触面はラバー素材である。<BR>2)アンケート調査:(1)競技復帰から1年までの剣道競技の回復レベルについて。(2)アキレス腱用装具とテーピングとの比較(フィット感、安定感、安心感、動きやすさの4項目)。<BR>3)MRIによるアキレス腱修復状況の確認(術後3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月)。<BR>【説明と同意】<BR> 剣道の練習中、左アキレス腱断裂にて当院でアキレス腱縫合術を行った年齢17歳の女子高校剣道選手3名である。対象者には事前に発表の趣旨を十分説明し同意を得ている。<BR>【結果】<BR> 対象者3名とも上記リハビリテーションプログラムに沿って、術後3ヶ月以内で競技復帰を果たし、県総合体育大会に出場し好成績を収めた。<BR>回復レベルのアンケートについては、3~4ヶ月で60%、4~5ヶ月で70~80%、6ヶ月で90%、10~12ヶ月で100%であった。<BR>装着感は、装具装着初期~5ヶ月までは全例とも安定性良く、蹴り出しをサポートするので装具が良いとの回答。ただし、5ヶ月以上になるとテーピングのほうが動きやすいとのことであった。<BR>MRI のT2強調画像でのアキレス腱修復状況は、3ヶ月ではアキレス腱縫合部に高信号があり、周辺組織も腫れている状態で修復は十分とはいえないが連続性は得られていた。6ヶ月では高信号も消失し、周辺組織の状態も安定していた。<BR>【考察】<BR> 剣道競技への早期復帰の要因は、断裂部の固定を強固にする術式と、剣道の練習開始に向けたアキレス腱用装具の開発により、早期リハビリテーションプログラムに沿ったリハビリテーションが行えたことである。したがって、当院で行っているアキレス腱縫合術後のリハビリテーションプログラムは、早期スポーツ復帰に有効であり妥当であったと考えられる。また、当院で開発したアキレス腱用装具は、術後5ヶ月までは底屈誘導バンドにより剣道の踏み込み動作における蹴りだしに有効であると思われた。さらに、アキレス腱が十分修復されたと思われる術後6ヶ月目はテーピングのほうが良いとのアンケート結果とMRIでのアキレス腱修復状況から装具除去の時期は6ヶ月と考える。今後の課題は、スポーツパフォーマンスにおける長期成績について検討する必要がある。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> スポーツ傷害のリハビリテーションにおいて、スポーツ現場への早期復帰は重要な課題の一つである。今回の報告は、スポーツ選手のアキレス腱修復術後における早期スポーツ復帰へのリハビリテーション指標や今後の課題を考える上において有効であると考える。