著者
久保田 尚浩 山根 康史 鳥生 幸司
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.467-472, 2002-07-15
被引用文献数
1 4

ブドウ'マスカット・オブ・アレキサンドリア'および'巨峰'の1芽に調整した挿し穂を用いて, 休眠打破に及ぼす数種アリウム属植物のペーストおよび揮発性物質の影響を調査した.5種のアリウム属植物(ニンニク, ニラ, ラッキョウ, タマネギ, ネギ)のペーストを挿し穂の切り口に塗布したところ, 発芽は促されなかった.しかし, 揮発性物質の気浴処理では発芽が促進され, その程度は黄ニラで最も大きく, 次いでニラ, ラッキョウ, ニンニクおよびタマネギの順であった.これら植物の揮発性物質の休眠打破効果は, ニンニク中の休眠打破有効成分である2硫化ジアリルや3硫化ジアリルよりも小さかった.ニンニク, 黄ニラおよびラッキョウを煮沸し, それらの揮発性物質で気浴処理したところ, 発芽は促進されなかった.挿し穂をニンニク, 黄ニラおよびラッキョウの揮発性物質で12時間あるいは24時間気浴処理したところ, 市販のガーリックオイルの揮発性物質と同程度に発芽が促進された.挿し穂をニンニクおよび黄ニラの揮発性物質で, 温度を変えて24時間気浴処理したところ, ニンニクでは高温条件で発芽が促されたが, 黄ニラでは温度の影響は認められなかった.以上のことから, ニラとラッキョウはブドウの芽の休眠打破に有効であること, 休眠打破に有効な物質はニンニクと同様に揮発性であることが明らかとなった.