著者
倉藤 祐輝 尾頃 敦郎 藤井 雄一郎 小野 俊朗 久保田 尚浩 森 茂郎
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.425-431, 2008 (Released:2008-07-25)
参考文献数
21
被引用文献数
5 5

ブドウの早期成園化と高品質な果実の多収を目的に,灌水同時施肥による超密植栽培システムを開発した.本システムは,根域を制限せずに,10 a当たり800本以上の挿し木苗を超密植し,樹冠下に不透水性マルチシートを設置し,自動灌水制御装置と液肥混入器および点滴灌水チューブを用いて,生育ステージに応じて灌水と施肥を同時に行う方式である.定植2年目には成園並みの果実生産が可能であった.果実品質と収量に及ぼす新梢密度の影響を調査したところ,着果基準を15果房・m−1と設定した場合,新梢密度を10~20本・m−1とすることで,果粒重,糖度および果皮色の優れた果実の多収生産が可能であることが明らかとなった.以上の結果から,本方式での3か年の果実品質と収量から,年間の灌水同時施肥基準を策定した.
著者
久保田 尚浩 宮向 真由美 山根 康史 小林 昭雄 水谷 房雄
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.927-931, 1999-09-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
22
被引用文献数
3 3

ブドウの芽の休眠打破に効果のあるニンニクについて, その有効成分を検討するため, 'マスカット・オブ・アレキサンドリア'と'巨峰'の挿し穂に対するニンニクの抽出物と揮発物の休眠打破効果を調査した.市販のガーリックオイルとニンニク磨砕物を挿し穂の切り口に塗布したところ, そのいずれにおいても発芽が著しく促進された.しかし, 凍結乾燥したニンニクからの抽出物および市販のニンニク粉末をラノリンで混和して塗布したところ, 休眠打破の効果は全く認められないか, 極めて小さかった.磨砕したニンニクを煮沸すると, 煮沸しない場合と比較して, 上澄み液, 沈殿物ともに休眠打破の効果が低下した.挿し穂をニンニク磨砕物および市販のガーリックオイルで気浴処理したところ, 塗布処理に比べて効果は小さいものの, いずれの気浴処理でも発芽が促進された.これらのことから, ニンニクに含まれるある種の揮発性物質がブドウの芽の休眠打破に有効であると推察された.ニンニク揮発性物質の休眠打破効果は, 11月のようなブドウの芽の休眠が深い時期ほど大きく, 休眠が浅くなるにつれて低下した.
著者
Edi SANTOSA 杉山 信男 中田 美紀 河鰭 実之 久保田 尚浩
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.220-226, 2005-09-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
9

西ジャワ州クニンガン県におけるカキ栽培の経済性を明らかにするため, 農民へのインタビューを実施した.その結果, カキ栽培からの所得が農業所得の19~35%を占めていることが明らかになった.カキの樹齢は1年生から100年生で, 平均29年生であった.農民は除草と収穫のために年に1ないし2回, 果樹園に出かけるが, 施肥, 農薬散布, 灌水は行っていなかった.カキの樹間でチャ, コーヒー, ショウガ, 野菜などを間作する農民もいた.新梢は雨季が始まる9月から11月に萌芽し, 11月に開花した.収穫は4月下旬から6月下旬の間に行われていた.7月から8月の乾季には多くの樹が落葉した.1樹当りの収量は94から130kgであった.農民や仲買人は収穫した果実を生石灰入りの水に5日間漬けて脱渋処理を行っていた.農民はカキ栽培が土壌浸食を防止する効果があることを認識していた.これらの結果から, 急傾斜地のカキ栽培は環境を破壊せずに農民の所得を向上させる上で有効であることが明らかになった.
著者
小野 俊朗 平松 竜一 久保田 尚浩 依田 征四 高木 伸友 島村 和夫
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.779-787, 1993 (Released:2008-05-15)
参考文献数
24
被引用文献数
7 5

ブドウ'ピオーネ'の無核果栽培において,同一園で毎年着色が良好な樹と不良な樹を用いて,着色に違いが生じる原因を新梢生長や果実発育の面から検討した.新梢伸長,新梢当たりの葉面積および葉のクロフィル含量には着色良好樹と不良樹の間に差はほとんど認められなかった.単位面積当たりの収量は着色不良樹よりも良好樹でわずかに多かった.果粒肥大にも両者に大きな差はなかったが,不良樹では果粒軟化日が良好樹よりも約5日遅かった.果皮色は,果粒軟化後から成熟時まで常に着色良好樹で優れ,とくに軟化後2~3週間以降の差が顕著で,成熟時のアントシアニン含量は着色良好樹が不良樹の約2倍であった.屈折計示度は,成熟期間をとおして着色良好樹で高く,とくに果粒軟化後約3週間以降に両者の差が大きく現れた,果肉の糖含量の変化もほぼ同様であったが,その組成比には良好樹,不良樹間に差がなかった.
著者
久保田 尚浩 小野 俊朗 小原 章男 福田 文夫 片岡 郁夫
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

(1)ブドウ栽培用ランプの開発:発光ダイオードを使って、450と660nmにピークを持つランプおよび両波長を半分ずつ持つランプを試作した。(2)ブドウの生長と花房分化に対する光の作用性:ピオーネを供試し、上記のランプおよび730nmにピークを持つランプで長日処理(16時間日長)した。660nmでは新梢生長が最も優れ、花房原基数も他区の約2倍であった。ブドウ3品種を供試し、自然日長の異なる3時期(12月、2月、3月)からシリカ電球、育成用ランプおよび赤色光ランプで長日処理した。長日処理効果は、新梢生長ではピオーネで最も大きく、次いでデラウエア、マスカット・オブ・アレキサンドリアの順であり、また花房分化ではピオーネで大きかった。長日処理効果は、自然日長が短い時期ほど大きく、一方ランプによる差は小さかった。(3)ブドウ栽培における電照技術の開発:ピオーネの二期作において、二作目の新梢や果粒の生長を促すには14時間以上の日長が必要なこと、日長時間が長いほど処理効果が大きいこと、暗期中断処理は16時間日長よりも長日処理の効果が大きいことが明らかとなった。(4)紫外光によるブドウ果粒の着色促進技術の開発:UV-A照射はブドウ果皮のアントシアニン蓄積を促すが、その程度は品種によって異なること、成熟期後半だけの照射でもアントシアニン蓄積が促されること、その効果はPAL活性を介したものであること、品種によってはアントシアニン組成に違いが生じることなどが明らかとなった。(5)ブドウ果皮のアントシアニン合成におけるPALおよびmyb遺伝子の関与:幼果期の高いPAL活性は果実生長、成熟開始期の小さなPAL活性は着色に関係していると思われた。RT-PCR法によって3種類のPAL遺伝子断片と6種類のmyb遺伝子断片を得た。このうち、アントシアニン合成に関わる遺伝子は主としてmyb11.PAL5およびPAL14であると推察された。
著者
久保田 尚浩 小合 龍夫 宇都宮 直樹
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.99-110, 1992-06-01
被引用文献数
1

東南アジア, 特にインドネシアの農村に広く分布するホームガーデンの構造及びそこでの植物利用の実態を明らかにするため, 雨季にジャワ島各地で11のホームガーデンについてその面積, 標高及び用途別の有用植物の種類数を調査した.ホームガーデンの面積及び植物の種類数は各々500〜3200m^2,24〜76種と園によって大きく異なったが, これらに地域間での大きな差は認められなかった.園が大きいほど植物の種類数もやや多い傾向があった.各園とも, 果樹を始めとして野菜, デンプン作物, 観賞植物など用途の異なる種々の植物が存在したが, 果樹と観賞植物の占める割合が著しく高かった.用途別の植物の種類数は果樹36,野菜25,デンプン作物12,香辛料植物13,薬用植物14,工芸作物8,観賞植物79及びこれら以外のその他の植物(建築用や燃料用の樹木などを含む)31の合計218であった.このうち, 果樹, 野菜, デンプン作物などは多くの園にみられたが, 工芸作物, 薬用植物, 観賞植物及びその他の植物は調査した園のうち1園だけにしかみられないものが半数以上を占めた.以上のように, ジャワ島には植物の種類数が少ないものから多いものまで, 種々の様式のホームガーデンが存在したが, その地域性を明らかにすることはできなかった.
著者
久保田 尚浩 ポジャナピモン チャイワット 福田 文夫 藤井 雄一郎 小野 俊朗 倉藤 祐輝 尾頃 敦郎 功刀 幸博 小林 和司 茂原 泉 山下 裕之 藤島 宏之
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.9-16, 2009-02

This study was conducted to investigate the relationship between completion of dormancy of grapevinebud and temperature. Canes of 'Kyoho' and 'Pione' grapevines (Vitis labrusca×V. vinifera) grown in 7 vineyards with different temperature conditions, in Nagano, Northern Okayama, Yamanashi, Okayama, Okayama University, Fukuoka and Miyazaki, were collected at three different chilling exposures,December, January and February. These were then sent to Okayama University all at the same time. Cuttings with one bud were put into growth chambers kept at 25 or 30°C with 14 hours daylength, and budbreak in each cutting was surveyed at two day intervals for 60 days. Cumulative chilling hours (CCH) of exposure to below 7.2°C in each treatment time was largest in Nagano, followed in order by Northern Okayama, Yamanashi, Okayama, Okayama University, Fukuoka and Miyazaki. The CCH in Nagano was 2.5 to 4.8 times larger than in Miyazaki depending on the treatment time. The later the treatment time and the higher the temperature, the fewer were the number of days to first budbreak (NDFB) after treatment, irrespective of cultivar. A similar trend was observed in the number of days to 60% budbreak. In 'Kyoho' the NDFB was short in Nagano, Okayama University and Miyazaki, and longer in Okayama, Yamanashi and Fukuoka. In 'Pione' the NDFB was short in Fukuoka and Okayama University, and longer in Yamanashi and Okayama. The result was a weak negative correlation observed between CCH and NDFB in 4 of 7 vineyards. However, there was a strong positive correlation between NDFB and cumulative temperature (CT), a summation of temperature and hours of exposure to above 0°C from November 1 to treatment time and hours of exposure to 25 or 30°C from start of treatment to budbreak in each plot, in 6 vineyards excluding Miyazaki. The importance of estimating the completion of dormancy in grapevine bud based on CT is discussed.ブドウの芽の休眠完了と温度との関係を調査するため,温度条件の異なる7園(中信農試,山梨果試,岡山農試,岡山農試北部支場,岡山大学,福岡農試および宮崎)で栽培されている'巨峰'と'ピオーネ'から低温遭遇量の異なる3時期(12月,1月,2月)に結果母枝を採取した.直ちに岡山大学に送り,1芽を持つ挿し穂に調整した後,25または30℃のインキュベーター(14時間日長)に入れ,2日間隔で60日間発芽を調査した.処理開始時の7.2℃以下の遭遇量は中信農試で最も多く,次いで岡山農試北部支場,山梨果試,岡山農試,岡山大学,福岡農試,宮崎の順で,中信農試と宮崎では処理時期により2.5~4.8倍の差があった.発芽所要日数は,両品種とも処理時期が遅いほど,また温度が高いほど少なく,60%発芽所要日数もほぼ同様の傾向であった.'巨峰'の発芽所用日数は中信農試,岡山大学および宮崎で少ない一方,岡山農試,山梨果試および福岡農試で多く,また'ピオーネ'では福岡農試と岡山大学で少なく,山梨果試と岡山農試で多かった.7園のうち4園で低温遭遇量と発芽所要日数との間に負の相関がみられたが,相関係数は低かった.一方,11月以降処理開始までの0℃以上の温度の積算値と処理開始から発芽までの25または30℃での積算値を合計した積算温度と発芽所要日数との間には1園を除き極めて高い正の相関が認められた.これらの結果を基に,積算温度によるブドウの休眠完了予測の可能性を考察した.
著者
久保田 尚浩 田中 孝 島村 和夫
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.11-20, 1980

ブドウ樹の生育と地温条件との関係を明らかにするために,接ぎ木1年生の鉢植えMuscat of Alexandria(H,F、台)について,新しょう伸長期にあたる4月4日から5週間、室温を16℃以上に保ったガラス室内で地温を6段階(12,15,20,25,30,35℃)に調節し,樹体各部の生長および数種の体内養分含量に及ぼす地温の影饗を調査した. 1)新しょう伸長は25,30℃の両区で最もすぐれ,処理終了時の伸長量は約150cmであった. 一方,12,15,35℃各区の生長は処理開始直後から著しく劣り,40~50cmの伸長量であった. 2)葉,茎および新根を合計した新生部分の生体および乾物重は25,30℃両区で最も多いのに対して,12,15,35℃の各区では著しく少なく,前者の1/3以下であった. とくに,12,15℃両区の新根発生量は極めて少なかった. 旧根の乾物重は20℃以下の地温区よりも生長のすぐれた25,30℃の両区で少なく,またその乾物率(乾物重/生体重)も低かった. 3)N含量は葉では地温が高いほど,また葉以外の茎,新根および旧根では25℃区で最も低かった. P含量は葉では25℃以上の区で低く,旧根では30℃以上の区で高かった. K,Ca,Mgは地温が高いほど新根での含量が高く,一方,葉のCa,Mg含量は35℃区でとくに低かった. 葉におけるこれら各養分の総含量(含量X乾物重)は25,30℃の両区で最も多かった. 4)新根の全糖およびデンプン含量は25℃区で最も高く,これ以上の地温区において低かった. 30℃以上の区では旧根のデンプン,全糖ともに少なかったが,12℃区ではデンプン含量が著しく高いのにくらべて全糖が低かった。
著者
片岡 郁雄 別府 賢治 田尾 龍太郎 久保田 尚浩
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

モモの低温要求性の発現段階を中心に,覚醒段階での人為的調節および低温要求性の遺伝的制御を含め,以下の点について検討を行った.1)環境と樹体要因が低温要求性の発現時期と量に及ぼす影響.多低温要求性品種では、7月上旬より新梢基部のえき芽は休眠に移行し、9月には深い休眠状態に達すること、導入期においても石灰窒素の発芽促進効果が得られること、気温、日長は休眠導入の開始に影響しないことが明らかとなった。2)低温要求性の異なる品種の発芽・開花特性の比較.少低温要求性品種においては、低温遭遇350時間の早期加温でも高い発芽率が得られ、正常な開花がみられた。これらの品種では、休眠完了後、温度感応性が増大し、より早い開花がもたらされるものとみられた。3)低温要求性の異なる穂木,台木を組み合わせた樹の生長様相 発芽・開花は穂木の低温要求量に大きく依存すること、葉芽の発芽には台木の低温要求性が影響することが示された。4)雌性器官生育育に及ぼす休眠覚醒後の温度環境の影響 休眠完了後の雌性器官の退化は、高温により助長され、結実率の低下の一因となっていることが示された。5)各種の休眠覚醒物質処理が低温要求性の異なる品種の発芽に及ぼす影響 シアナミド、石灰窒素は、二硫化アリルに比べ休眠打破効果が大きいが、休眠最深期には効果が小さいことが示された。6)芽の休眠過程における関連遺伝子の発現 休眠期ならびに休眠覚醒期の花芽と葉芽からmRNAを抽出し,サブトラクション法により解析したところ,休眠期と休眠覚醒期で転写量の異なる遺伝子がいくつか見出され,その中にcell cycleの制御に関わっている遺伝子が含まれていた.7)多低温要求性品種と少低温要求性品種の交雑個体の低温要求性 '白鳳'と少ない低温要求性品種の交雑後代において、'白鳳'に比べ、低温要求量は低減した。
著者
久保田 尚浩 山根 康史 鳥生 幸司
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.467-472, 2002-07-15
被引用文献数
1 4

ブドウ'マスカット・オブ・アレキサンドリア'および'巨峰'の1芽に調整した挿し穂を用いて, 休眠打破に及ぼす数種アリウム属植物のペーストおよび揮発性物質の影響を調査した.5種のアリウム属植物(ニンニク, ニラ, ラッキョウ, タマネギ, ネギ)のペーストを挿し穂の切り口に塗布したところ, 発芽は促されなかった.しかし, 揮発性物質の気浴処理では発芽が促進され, その程度は黄ニラで最も大きく, 次いでニラ, ラッキョウ, ニンニクおよびタマネギの順であった.これら植物の揮発性物質の休眠打破効果は, ニンニク中の休眠打破有効成分である2硫化ジアリルや3硫化ジアリルよりも小さかった.ニンニク, 黄ニラおよびラッキョウを煮沸し, それらの揮発性物質で気浴処理したところ, 発芽は促進されなかった.挿し穂をニンニク, 黄ニラおよびラッキョウの揮発性物質で12時間あるいは24時間気浴処理したところ, 市販のガーリックオイルの揮発性物質と同程度に発芽が促進された.挿し穂をニンニクおよび黄ニラの揮発性物質で, 温度を変えて24時間気浴処理したところ, ニンニクでは高温条件で発芽が促されたが, 黄ニラでは温度の影響は認められなかった.以上のことから, ニラとラッキョウはブドウの芽の休眠打破に有効であること, 休眠打破に有効な物質はニンニクと同様に揮発性であることが明らかとなった.
著者
久保田 尚浩 三村 博美 島村 和夫
出版者
岡山大学
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.17-21, 1988-02
被引用文献数
2

モモ果実の渋味と土壌水分との関係を明らかにするために,コンテナ植えモモ樹の果実肥大,屈折計示度及びフェノール含量に及ぼす乾燥ならびに湛水の影響を調査した. 1)野性モモ台`武井白鳳'について果実発育第Ⅱ期(前期)と第Ⅲ期(後期)に2週間乾燥処理した.果実肥大はいずれの処理時期とも対照区より劣り,特に後期乾燥区で著しく劣った.屈折計示度は後期乾燥区で最も高かった.全フェノール,不溶性フェノール含量ともに対照区よりも両乾燥区で多かった. 2)寿星桃台,ユスラウメ台及びニワウメ台`山陽水蜜'について果実発育第Ⅲ期に約2週間,乾燥及び湛水処理した.果実肥大は各台木いずれの処理区でも対照区より劣った.屈折計示度は,乾燥処理区では対照区に比べて共台とユスラウメ台で高く,ニワウメ台で差がなかった.湛水処理区ではユスラウメ台で差がなく,ニワウメ台で低かった.全フェノール及び不溶性フェノール含量は,共台とニワウメ台では対照区よりも乾燥処理区で多く,ユスラウメ台では乾燥処理区で少なかった.湛水処理区ではユスラウメ台,ニワウメ台ともに対照区よりも多く,特にニワウメ台で多かった。