- 著者
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鳥谷 均
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.2, pp.67-79, 1985-02-01 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 18
- 被引用文献数
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静穏な晴夜に長野県菅平盆地で形成される冷気湖の発達過程を明らかにし・これと冷気流を含めた盆地内の局地循環との関係を考察するために観測を行なった・この結果・次のことがわかった. (1) 夜間,盆地内の大気層は3層からなっている.すなわち,下層から, (i)風のほとんどない安定層, (ii) 盆地底で最低気温が現われる時刻に,周囲の斜面で形成された風が流入する安定層, (iii) 一般風が卓越する中立な層である. (2) 日没後,一般風が弱まると,盆地底では盆地の短軸方向の風向をもつ弱い風が,斜面上では斜面下降風(冷気流)が現われる.盆地底の上空では冷気湖が形成され,しだいに発達する. (3) 上空で吹く一般風が弱い時には,冷気湖の厚さは周囲の尾根の平均的な高度の1/2に達する.(4)夜間,上空の風が一時的に強くなる“ブレイク”の時期がある.この時,冷気湖は薄くなり,斜面上でも気温が上昇する. (5) 斜面下降風(冷気流)の吹走時には,斜面上は盆地底に比べて気温の低下が小さい.また,風速の時間変化は40~50分, 20分前後,気温の時間変化は50~60分, 30~40分,20分前後の周期が卓越する.