著者
鳴川 啓子 外山 慎一 吉本 豊
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.143-154, 1997-02-07

平成8年3月の卒業式に,登校拒否学級の4人の卒業生全員が堂々と参加できた。登校刺激を控えなければならない"不安などの情緒的混乱の型"の子供たちであった。しかし,私たちは教育の営みを輪切りにして一喜一憂するのではなく,辛抱強くトータルなものとして捉えることに賭けた結果であった。終わってからT子が職員室へやってきて笑みを浮かべながら『校長先生来れ!』と差し出したリボン結びの置物。自分の乏しい小遣いで買い求めた『心』のこもったプレゼントだった。遠く離れて物陰から見守る母親の姿があった。登校拒否学級の子供の多くは,積年にわたって心因性や内因性に関わるあつれきや障害を深めて入級しており,医心領域の賢明な取組においても"途険し"の状況にあるようである。この1年の実践において,一人一人の確かな"心の成長"の軌跡が登校拒否学級の成果として示されたように思う。担任による子供の生涯をおもんばかった『人間育成』の教育の営みと,それを支援してきた本校教職員の姿勢に大きな誇りを感じるのである。(学校長吉本豊)
著者
鳴川 啓子 笠井 茂美
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.153-158, 2002-02-05

I子と出会って,数回目の家庭訪問のとき,彼女の口から出たことばに,返答に詰まった。彼女の傷ついた心の叫びがあった。「つらかったね」と言うのが精一杯であった。学校での友達や先生の事,色々な事が彼女に降りかかっていたのだろう。不登校という信号を出し,何かを訴えている彼女に周りにいる私たちは何をサポートしなければならないのか。ここに,学校が組織体制を組み一体となり,I子の支援に取り組んだ実践事例を紹介する。