著者
鵜子 修司 成瀬 翔
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.17-44, 2021 (Released:2022-03-31)

ユーモアについては、古来より多くの理論が提唱されてきた。しかし現代に至っても、ユーモアに関わる諸現象を統一的に説明する理論は完成していない。しかし近年、ユーモアの統一理論とみなしうる候補が提唱され始めている。無害な逸脱理論(benign violation theory: BVT)も、そうした候補の一つである。BVTは提唱者らによる精力的な研究により、国外では注目を集めているが、本邦での知名度は未だ高くない。またBVTの批判的検討は国内外を問わず現時点では行われていないと思われる。本稿では、主にMcGraw & Warren(2010)およびWarren & McGraw(2016)の論文に基づき、BVTの想定、および関連する実験の概要を紹介した上で、BVTの長所と問題点について検討した。結論として、BVTには多くの長所がある一方で、無視できない問題点もある。従って、BVTは現時点では支持できない理論だとみなされた。
著者
鵜子 修司 高井 次郎
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.120-135, 2018 (Released:2018-12-27)

Ruch, Kohler, & Van Thriel(1996)の作成した状態・特性快活さ尺度(State-Trait-Cheerfulness-Inventory: STCI) は、ユーモア・センスに関連する気質的基盤として快活さ、真剣さ、不機嫌さの3つを、個人の状態ないし特性として測定する尺度である。本研究ではSTCIの特性版(STCI-T)について、各項目の日本語訳を新たに作成し、信頼性・妥当性を検証した。大学生263名を対象にした調査の結果、オリジナルのSTCI-Tを構成する下位特性(facet)モデルは、各下位特性における信頼性の低さから維持されなかった。その代わり、本研究では下位尺度への修正済I-T相関に基づく項目選定から、暫定的なSTCI-T 49を構成した。このときSTCI-Tにおける、3つの下位尺度の信頼性は.73から.89であり何れも高かった。また各下位尺度とBig Five、及びwell-beingの指標の相関は、先行研究の結果を再現した。以上から、STCI-T 49はオリジナルのSTCI-Tに類似した概念を測定する尺度として、ある程度の信頼性・妥当性を有していると結論付けられた。最後に、本研究でオリジナルのSTCI-Tにおける下位特性・因子構造が再現されなかった結果の説明として、考えられる可能性について検討し、今後の課題についてまとめた。
著者
鵜子 修司 成瀬 翔
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.53-69, 2022 (Released:2023-02-27)

現状、研究者たちがユーモアを明晰に定義できていないことは、批判されるべきである。この事実は、研究者たちが「ユーモアとは何か」について、非専門家の期待に応える知識を示せないというだけでなく、ユーモアを研究するための基本的な道具を持たないことをも意味している。これは約四半世紀前にWillibald Ruchが既に提起していた問題である(Ruch, 1998)。彼はこの問題を二つに改めている。すなわち、「これまで我々はどのようにユーモアを用いてきたか」および「我々はどのような科学概念としてユーモアを理解したいか」である。本稿では、これらを「Ruchの問題」と総称し、特に後者の問題に答えるため必要な議論のロード・マップを提示した。これはユーモアを定義するために、「どのような型を採るべきか」および「どのような要素を含めるべきか」という、二つの問いに大別された。これらは問題に対処するトップ・ダウン/ボトム・アップな方針に、それぞれ対応する。