- 著者
-
鶴田 隆治
- 出版者
- 九州工業大学
- 雑誌
- 萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2004
物理現象の素過程を解明するに有効な解析ツールである分子動力学シミュレーションを用いて,準平衡状態にある単純分子アルゴンおよび多原子分子水のナノバブルの生成と消滅機構について検討した.まず,三次元計算系に対する分子動力学シミュレーションによりナノバブルを発生させ,その界面構造を観察するとともにYoung-Laplaceの式の適応について検討をした.その結果,Young-Laplaceの式ならびに古典的核生成理論はナノバブルへの適応は妥当ではないことが分かった.次いで,ナノバブルが存在できる気液界面の力学平衡条件を探るために,周囲流体,特に液体側の界面構造に着目し,気泡の生成過程または平衡状態において,気液界面における界面構造と圧力・温度挙動を解析した.また,極座標解析を行い,ナノバブルの半径方向における気泡周りの数密度分布と力分布を求めた.さらには,強制的に外圧を加えた際のナノバブルの消滅過程を調べた.以上の解析結果より,ナノバブルの気液界面層において,分子が平衡状態よりも周期的に変化する大きな力を受け,気泡界面層の位置の遷移とともに界面層近傍の構造が気泡挙動と強く関連していることが分かった.すなわち,気泡外部の液体分子からの分子間力によって気液界面をつくるためのエネルギーが供給され,球形の気泡界面が形成・維持されていると考えられる.また,水分子においては,ナノバブルの界面は配向により負に帯電することを見出した.