著者
鹿山 将
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.869, 2023 (Released:2023-09-01)
参考文献数
2

脳は,末梢神経を介して末梢臓器の活動を感知し,制御している.こうした脳と末梢組織との関連は,近年注目を集めている.例えば,大脳皮質の一部である島皮質は,身体の内部の活動と深く関連する.マウスを用いた知見では,炎症に関連する島皮質の神経細胞を人工的に活性化させることで,腸内の免疫細胞が炎症時と類似した挙動を示すことが報告されている.このことは,島皮質が腸内の炎症状態を記憶し,制御する可能性を示している.一方で,炎症発生時に複数の脳領域の活動が変化することから,こうした機能は島皮質だけでなく,他の脳領域も担っている可能性が考えられてきた.本稿では,海馬の中でも,特に情動記憶と関連する腹側海馬に着目し,末梢組織における炎症性疼痛との関連を明らかにしたShaoらの報告を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Koren T. et al., Cell, 184, 5902‒5915.e17(2021).2) Shao S. et al., Cell. Rep., 41, 112017(2023).